2006 2 22 クラッシュパンチシリーズ 第160弾 富本慶久引退記念試合
…に出場するメインイベンターのあるA級ボクサーについて書きたい。
石川浩久(国分寺サイト-)32戦17勝5KO8敗7分…。72年生まれ 元・日本Sバンタム級1位
彼が再起戦のリングで久々の勝利を味わったのは昨年の10月11日であった。
参考記事前戦 対池田正光 http://ameblo.jp/higege91/entry-10005057808.html
石川浩久全戦跡 http://www.boxrec.com/boxer_display.php?boxer_id=015763 BOXRECより
昨年の10月の勝利は、2001年4月8日以来の勝利だった。
この5年半の期間中3つの敗戦と1つの引き分けを挟んでいて、その対戦相手2名はそれぞれ後の日本王者、東洋太平洋王者となる世界ランカー、中島吉兼、鳥海純等が含まれる…。
思い起こせば、石川とは小学校1年5組でクラスメートだったような気がしてきた。同じ少年剣道に所属していて毎週末会っていた。
そんなに仲良しって言うわけではなかったが、顔見知りであり、挨拶やなんとなくの会話をする間柄であった。ボクは当時アトピー性皮膚炎で冬の道場はきつくて休みがちになった。手足が「アカギレ」だらけになってぱっくりとその傷口が開いてしまう為、素足で闘う剣道は正直厳しかった。乾燥したアカギレは本当に痛い。学校へ通学する際も「爪先歩き」で通ったのを覚えている。
話が逸れた。
…で、同級生の三十路ボクサー・石川浩久が再起2戦目のリングに上がるのだが、その「心」の中にあるものは何であるのか?そんなことについて少し書きたい。
最近、35歳の日本を代表するボクサー坂本博之が3年7ヶ月ぶりの勝利を挙げてホールが沸きかえったが、そんな坂本は「世界」だけがボクシングではない…という境地にあるようだ。それはファンも知っている。坂本が全盛期をとうに通り越して、いまや斜陽の中にあることを…。そして、本人もそれを承知している。
…が、闘う。
坂本に関して言えば、ボクシングが好きだ…という以外、明快の答えが見つけられない。そして、腰にメスを入れての大手術から復帰したわけだが、そんな怪我から立ち直った証の勝利の味は格別なものであったと思うし、その勇気に感銘を受けたファンは数知れない…。
また、三十路ボクサーと言えば先日WBCフェザー級王者となった越本隆志も右肩腱盤の断裂という故障を抱えていることを明かしたのはタイトル奪取後のことであった。医者にボクシング断念を告げられても彼はその右肩をかばいながら闘い続けた。そして、きちんとケアすれば闘えることを証明し、父親との二人三脚で掴んだこのベルトのありがたみと夢の結実の喜びと共に、そうした「証明の達成」が更なる喜びであったようだ。
では、石川浩久の「喜び」とは何か?
その闘う意味とは何か?
彼が「リング」で『証明』しようとするものは一体何であるのか?
中学校までは同じ学校だったが、卒業後は疎遠になった。
その後の彼がどんな仕事をしながら、何を思いながらトレーニングを積み、どんな「夢」を抱えながら、どれほどの『挫折』を味わったのか、僕はほとんど知るよしもないわけだが、彼はリングに上がるのだ。
33歳…
石川は勝気な少年だった。喧嘩もしてた。でも、ギターを手にしたり感性も豊かだったような…。
同じ故郷、同じ時代、同じ瞬間を生きてきた石川浩久の『作品』は果たしてどんなものであるのか?
駅に向かって歩くだけで息を切らせる自分が情けないよ、全く…。
では、僕は何のために生きているのか?
「夢」…
確かにある…、が、最近はおぼろげな形になってしまった。
「限界」…を感じずにはいられないのも確かだ。
しかし、それは誰しもに当てはまることだ。みんな土俵は違うが戦っているし、それぞれに哲学しているのだ。そして、その表現手段が違うだけの話なのだ。
…で、僕がこれほどまでにボクシングにのめりこむのはその『明快』さであり、『熱量』である。
僕ははっきり言って、ぶっちゃけて言えば、今、「道に迷っている」…。
そして、藁にもすがる思いでボクサーたちの「激情」と「一心不乱な執念」を求めている。
誰かの「ホトバシリ」に期待するのは間違っている…とは思いつつも、「キッカケ」を期待しているのは正直な気持ちだ。
タイトルマッチではないし、有名無名かと言われれば華やかさは足りないだろう。
しかし、背負ったものはタイトルマッチであろうとなかろうと三十路ボクサーにとっては「同じ」である。
そして、自分を追い詰め、成し遂げようとするその姿勢は嘘偽りのない『真実』である…。
では、石川浩久の対戦相手は…?
遠藤靖幸(ワタナベ) 7勝4KO8敗 82年生まれ 23歳 福島県出身…
遠藤選手の戦績 http://www.boxrec.com/boxer_display.php?boxer_id=221273 BOXRECより
ここ6戦は5敗1分けで最後の勝ち星は2003年12月から遠のいている。そうか、彼もまた「崖っぷち」なのだな…。
しかし、まだ23歳か、一回りも若いのにこの戦績ってことは、ボクシング一筋ってことかなぁ…。
デビューが2001年ってことは19歳でリングに上がったことか…。
これだけ負け続けてもこうして闘い続けているって事は、「本物」に違いない。
そんで、ネットで調べてみると4R賞金マッチの「Bタイト」とかにもエントリーしてるみたいだし、かなり積極的なところもありそうだなぁ…。
世界タイトルマッチ以外認知されない今の日本ボクシングを悲しむ前に、ホールへ行こう!!
ボクシングが好きな人は、きっと、その『切実さ』を知っているからだと思う。
石川も然り、遠藤も然り、越本も然り、坂本もまた然り…である。
みんながみんな、「夢」を抱えて戦っている。
自分が認められる自分を抱きしめる為にリングに上がり、見知らぬ誰かのために、そして、愛する誰かのためにリングで戦う…。
それは僕のためでもあり、あなたの為であったりもする…と思う。
もし、僕と同じ様に道に迷っている方がいらっしゃるようであれば、ぜひともこの日の後楽園ホールへ足を運んでみてはどうか?
こう言っては失礼だが、経験上、当日券も充分残っていると思うし、平日ではあるが午後7時半までに水道橋・後楽園に辿り着ければメインイベントは間に合うだろう。
こんな言い方は失礼かもしれないが、『後のない男たち』の10回戦、36分間の闘いを自分の目で確かめてみるのはどうか?
そんな「彼ら」を通じて、『自分』を見つめなおしてみてはどうか?
御愛読感謝
つづく
追記 日本ミドル級タイトルマッチを生中継でテレビ観戦。
王者
日本ミドル級王者
東洋太平洋同級1位
WBC同級33位
板垣俊彦 18勝10KO7敗
VS
挑戦者
日本ミドル級1位
東洋太平洋同級4位
鈴木哲也 14勝11KO5敗
王者の板垣は本来ボクサーファイターだったはず…、が、ファイタースタイルで手数を稼ぎ、圧倒的な前進で距離を縮めて押し続け、本来ファイタースタイルの鈴木が距離をおいての戦いを強いられ、接近戦で勝った板垣が大差判定勝ち?…って思いきや2-1の僅差の判定をモノにした。
R1は挑戦者・鈴木が思いのほか良く、板垣はズルズルとやられるかも!?ってのは杞憂に終わった。根性剥き出しの執念の勝利であった。
挑戦者鈴木もがんばったが、気迫と根性でやられた感が残った。中盤、スタミナの落ちかけた板垣は相当に疲れていた。R5~6で踏ん張ってポイントを奪えれば流れは変わっていた…。が、ここで行けなかったのが痛かった。根性がないはずはないのだ、問題はここぞの場面で発揮できるかどうか?…だと思う。
板垣の勝利への執念が結実したいい試合だったのだが、残念だったのは勝利者インタビューだ。
…実はタバコ辞めたの1ヶ月前なんです!!
…今後の目標? …適当にやりますわ!!
それはないだろう、板垣俊彦よ…。
ケーブルテレビ局の契約社員として営業マンとして働きながらがんばっているんだろう!?
その苦労と両立の難しさは想像を遥かに越えるものだと察するも、日本王者としてファンを喜ばせる為だけでなく、自分の為だけでもなく、子供たちやたくさんの人々に感動と勇気を与える立場であることの自覚を持って欲しい。
最高の「勝利への執念」を発揮して勝ち取った初防衛だっただけに、最後はがっかりだった。
でも、いいガッツだった。でも、勝利者インタビューはいただけない。
身内に説教されることを願う!!
お疲れ様でした。おめでとう。
…それと、17日に敵地タイでABCOタイトルに挑戦した臼井知史選手(ヨネクラ)と仲田典由選手(横浜さくら)は残念ながら敗れた模様だ(boxrec参照http://www.boxrec.com/name_search.php )。先ずは無事に帰国してゆっくり休んで欲しい…。お疲れ様でした。
再び つづく