ああ、ついに迫ってきた。
あなたには自分の人生を賭けるほどの『瞬間』がありましたか?
僕は、僕には…
ああ、遂に迫ってきた。4月25日、後楽園ホール、メインの8回戦だ。
元日本スーパーバンタム級1位 石川浩久 18W5KO7L7D 33歳
VS
日本フェザー級9位 梅津宏治 10W5KO6L 29歳
過去記事 石川選手関連記事
VS遠藤靖幸 http://ameblo.jp/higege91/entry-10009373005.html
VS池田正光 http://ameblo.jp/higege91/entry-10005057808.html
石川浩久全戦跡 http://www.boxrec.com/boxer_display.php?boxer_id=015763 BOXRECより
2002年9月の3連敗後(後の日本王者・中島吉兼、後の東洋太平洋王者・鳥海純らを含む)試合から遠ざかっていた石川浩久が復帰したのは昨年6月であった。
約3年間の沈黙の間に、三十路となったA級ボクサー、石川浩久が何を想い、何のために再起を決意したのか?その胸の内を正確に理解する事は恐らく出来ないだろう。
しかし、ここ2戦、ホールで観戦してきたHIGEGE91の目に映った石川のファイト、それは悔いを残さぬために全てをさらけ出して戦う男の姿であった。
日本タイトル前哨戦で敗れた後、スランプをへて沈黙した3年間に、彼、石川浩久というボクサーに蓄積し、降り積もったものが何であるのか?…の問いに対する『鍵』がここ2戦に隠されているような気がする。
それは石川浩久のボクシングスタイルにおける攻撃面での積極性だ。
石川のボクシングスタイルは俗に言われる「技巧派」と呼ばれるもので、軽快なフットワークとコンパクトですばやい連打が持ち味だ。敵の攻撃を空転させながらすばやく踏み込みワンツースリー!!…と打ち込み続ける。敵の攻撃を距離をおいて捌き、フットワークと踏み込みスピードを活かしきって戦うスタイルだ。
石川浩久の戦績に引き分けが多いのは、彼が技巧において他の選手よりも優れていたためかもしれない。計算できすぎた…とは言わないまでも、ドロー採点で苦汁を味わった過去が今の彼をさらに前へ前へ…と攻め続けさせる原動力かもしれない…などと想像する。
当てて離れる…では足りない、そう感じているのではないか?
そして、引退の二文字を背負ったまま過ごした沈黙の3年間に蓄積したもの、それは、
まだ俺は終わっちゃいない… まだ俺は始まっちゃいない… まだまだ途中なんだ…
って気持ちではなかろうか。
自分の探し求める「自分」へと辿り着こうとするその欲求と衝動がここ2戦で眩しいほどに輝いている。
それは充実…と呼ばれるモノであろう。
ポイントで圧倒的優位に立つも、最後まで「倒す」為に戦い続ける…。これが今の石川浩久だ。強いぞ、精神力が違う。その精神力の充実を見たのは池田正光戦であった。
石川はR2にスリップダウン気味の不幸なダウン裁定を受けるも、表情一つ変えずに立ち上がると、圧倒的に攻め続けた。「全てを受け入れる覚悟」がなせる業ではなかろうか?
どのボクサーも輝いているが、特に眩く輝くのは「心と体」がそんな「境地」で、ある一念のもとに『合致』した場合であろう。
俺は俺が認める俺になる…
過去記事参照していただきたいが、池田戦、遠藤戦ではその『合致』が遺憾なく輝いた名勝負である。
三十路の方々、特に身に憶えはありませぬか?
俺ってこんなものだったの?
こんな「今」の為に俺は苦労してきたの?
俺って存在の「証」ってなに?
これが俺だと言い張れる「モノ」がない?
男女問わず、もちろん、年齢も問わず、これは人間として生まれた以上、誰しもが抱えるであろうこの『大問題』に対して挑む三十路男の命がけの挑戦である…と言える。
もちろん、対戦者の梅津選手も同じ気持ちであるし、昨年、前日本王者・現OPBFフェザー級王者の榎洋之に挑戦して判定で敗れてからの再起後2戦目であり、日本王座挑戦を目指す為には当然負けられない。
梅津選手も29歳であり、タイトル挑戦失敗という挫折を味わい、再びタイトルを目指している…という意味では石川選手の近いが、ちょっと違う。
…3年間の沈黙
が、石川浩久という男を変えたのだ。
積もりに積もった「自己を完成させようとする心」が爆発するときを待っているのだ。
後悔、不完全燃焼…だけではない。
未だ見ぬ更なる『新しい自分』という生き物との対面を石川浩久は求めている。
そして、それは誰しもが願っていることではなかろうか?
三十路だからって諦められるか!?
がっかりしかけている方、諦めたくなり始めている方々、もう何もかもが間に合わないと感じている方々…
この際、三十路代表、石川浩久選手の「挑戦」を直接生で観戦されてはどうか?
勝利を信じている…が、対戦者の梅津選手は日本タイトルマッチにも挑戦した1階級重いフェザー級ランカーだ。
線は細いが身長リーチで石川を上回っているような気がする。
さらに、あの石のような左ジャブを持つ榎洋之と戦いかなりの善戦をし、判定まで持ち込んだ実績は事実であり、脅威といえる。
パワー、身体では劣るかもしれない…が、しかし、スピードと手数、さらに経験と技術では石川が梅津をはるかに凌駕している、と見る。
油断できない。集中力を延々と研ぎ澄ました状態で戦い続けなければならない…が、偏った守りに入ることをしない、ここへ来て「倒すボクシング」を探しもとめる「新しい」石川浩久に期待する。
ボクシングの魅力、それはボクサーたちが求める純然たる『強さの哲学』であるだけでなく、各人が探し求めているであろう『こうありたいと願う自分』の姿が一瞬にせよ、不意に、ホールのリングで火花のようなモノにせよ、垣間見える瞬間があるからではなかろうか?
そして、自分の中にも、そんな何かが反応し、『ドキン…』と脈打つからではなかろうか?
ドキン…としたい方、25日はぜひとも後楽園ホールへ行きませう。
僕は仕事が立て込んでいて大ピンチであるが、駆けつけるつもりだ。
石川選手にとって、人生の集大成…とも言えるこの大一番を通じて、最近『ドキン』としていない方はぜひとも『ドキン』とすべきである…と提案させていただくものであります。
石川浩久よ、えぐれー!!!
ご愛読感謝
つづく