石川浩久、33歳の挑戦、日本ランカーに挑む!!! 止まっていた『時』よ、再び動き出せ!!!!  | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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2006 4 25 後楽園ホール クラッシュパンチシリーズ


石川VS梅津1



元日本スーパーバンタム級1位 石川浩久  18W5KO7L7D 33歳

  VS


日本フェザー級9位 梅津宏治 10W5KO6L 29歳


 

過去記事 石川選手関連記事

VS遠藤靖幸 http://ameblo.jp/higege91/entry-10009373005.html  

VS池田正光 http://ameblo.jp/higege91/entry-10005057808.html

石川浩久全戦跡 http://www.boxrec.com/boxer_display.php?boxer_id=015763  BOXRECより


 33歳…


 引退の二文字が付き纏う年齢である。


 …が、しかし、彼、石川浩久を突き動かすものは何か?…リングへと駆り立てるものは何か?


 僕は小中学校での石川浩久しか知らない。今も昔も「お調子者」で通す僕のような人間にはわからない「何か」を彼は持っていたようだ。


 人付き合いが得意であったか?…と言えば、そうではなかったような気がする。かといって、彼が自ら進んで他人を拒絶したか?…と言えばそうでもない。


 とは言え、決して「無難なタイプ」ではなかったような気がする。


 「屈折」していた、とは思う。…が、世間的に言われる「ツッパリ」とも違ったような…。


 …彼とボクシングを結ぶ『鍵』は何か? 非常に興味深い案件である。 知りたい。 


 以前僕が書いた石川選手の記事に、彼、本人が書き込みをしてくれたことがある。


 …あの時、日本タイトル前哨戦で負けた時から、「時が止まって」しまったんだ


 そんな言葉があった。


 時は巻戻せない…が、『新しい時』は自分で作ることが出来る…


 そんなことを彼は感じていたはずだ。


 生み出す為に、あるいは、自分を生み出し直すために、彼はこの夜戦ったのだ。


 選手入場。先にリングに上がった梅津選手、僕の想像していたよりも背丈もリーチもない。…が、腕は太く胸板も厚い。とは言え、僕の頭の中で膨らんでいたヒョロナガ系でなかったのでちょっと安心(日本タイトルマッチ・榎戦しか観たことなかったので)…というのも、石川は元々スーパーバンタム級だったから階級を1つ上げての今回のフェザー級での戦い…ってことでフィジカル的な差が露骨に出るのが嫌だったからだ。しかし、パワーのありそうな太い腕にちょっと恐怖…。

 

石川浩久入場。…そんなに見劣りはしないか?身長リーチで圧倒的な差はないか?


R1 静かな立ち上がり…。両者オーソドックススタイルだが、フットワークを駆使する出入りの激しいアウトボクサー寄りの石川に対して、梅津はジワジワと間合いを測る展開。石川は細かい左で梅津の頬を当てる…も、梅津の右ストレートがクリーンヒット!! さらに実際に戦いが始まると梅津の身体がやたら大きく分厚く見えてくる。な、なんだぁ!? 有効打で梅津 10-9


石川VS梅津2


 R2 梅津、石川の早いコンビネーションの隙間、その打ち終わりに重いパンチを合わせてくる。石川はコンパクトなパンチを当てて徐々に敵を弱らせて行くタイプなのだが、梅津にはどうやら「1っ発」がある。接近戦でまともに打ち合うのは良くなさそうだ。石川、梅津の右ストレートをまともに喰らう。…が、左リードから右ボディーストレート!! …と、梅津のいきなりの左フックが石川を捉える!!! …石川、揺れる!!! …ぐ、が、ここで前へ出て手を出して行く。凌いだ。…下がっていたらやばかったかも。ここで早くも「気概」を魅せた石川だが、体格差、パワーの差がその後の試合展開に不吉な予感を感じさせる。梅津10-9


 R3 梅津はそんな体格差のアドバンテージを実感してか、あるいは、その大きなパンチが当たった感触に手応えがあったのか、手数も増えて積極的に出てくる。石川は足を駆使するも決して逃げない。果敢に自分の間合いから早いコンビネーションで対応。しかし、両者のクリーンヒットはほぼ互角でも重そうなパンチの梅津の有効打と攻勢が印象的だ。梅津 10-9


 R4 流れとリズムを変えたい石川、頭を振ってジャブワンツー!! 当たった!! 大振りの目立ち始めた梅津のパンチを空転させ始めた。細かく丁寧に当てて行く石川。コンビネーションのスピードと美しさは断然石川だ。きたー!!石川の右ストレートカウンター入ったぁ!! いい流れだ、と思いきや、石川が積み上げた有効な手数とヒットを一気に相殺する梅津の右ストレート3連打が炸裂!! がぁ!? 石川、真っ直ぐ後ろに下がってまともに喰らってしまう!! さらにロープを背負わされ連打を許す。惜しい!! 流れを掴みかけたのに…。梅津 10-9(偶然のバッティングにより石川右目瞼をカット)


 R5 梅津のいきなりの左フックと打ち下ろしの右ストレートが恐い。流石にパワーでは劣る。それはわかっていたことだ。石川が勝つには技術とスピードを駆使してまとめ打つしかない!!! 石川、梅津の懐に飛び込んでワンツー、さらにボディー打ち!! 細かく細かく当ててて行く。石川のパンチはこれまでもかなり当たっているのだ。しかし、梅津の見栄えの良い強打が相殺してしまうのだ。…が、このRは果敢に攻めきった石川であった。打たれたら打って出る。この『気迫』がこのRは石川のモノにした。梅津の大きな有効打を上回るクリーンヒット数で石川だ。獲った!! 石川10-9


石川VS梅津3


 R6 接近戦での打ち合いが増えてきた。両者互角か?有効打数では石川だが、よりダメージを与えていそうなクリーンヒットでは梅津だ。このRは判断が難しかったが、僕は互角とした。10-10


 R7 両者、互いにとって危険な距離での打ち合い!! 身体を寄せての「押し合い」では圧倒的に梅津だ。このフィジカルの差は埋めがたい。ドン!! …と押されてロープを背負ってしまう石川。石川、ダメージが溜まって来たか?苦しい。クリンチで凌ぐ。しかし、梅津に押し戻されてしまう。苦しい!!! 梅津 10-9


 R8 ラストラウンド!! ポイント的には石川は厳しい。ダウンが欲しい。しかし、梅津はタフだ。スタミナもある。その集中力も落ちる気配はない。どちらかと言えば、苦しい展開を我慢し続けた石川だが、前へ果敢に出てゆく。混戦から石川の右フックカウンター炸裂!!! …が、梅津はまだ下がらない。石川、さらに手を出す。そして、右ストレートがカウンター気味に梅津に当たる!!! …が、梅津は下がらない。そうだ、あの石の塊のようなジャブを放つ榎洋之とフルラウンド戦った男なのだ。それでもこのラストラウンドは石川が執念を爆発させた。


 止まってしまった時を再び自分の時にするために…!!!


 あの日本タイトル前哨戦で置き去りにしてしまった『自分』を取り戻す為に…!!!


 そして、ゴングが鳴り響いた。有効打、手数で石川10-9


 石川は最初から最後まで『自分』を貫いた…。フィジカルで劣るも、細かく丁寧に自分のボクシングを押し通した。


 …打たれたら打ち返す、下がらずに出る。


 僕のボクシング観戦経験など浅はかで偏ったものであるが、それでも『本物』を見抜く目はあると自負している。そして、上に掲げたその鉄則を勇敢に貫いた石川浩久はまごうことのない『本物』であった。


 Higege91の採点 78-75 で梅津宏治選手の勝ち

 公式の採点 78-75 78-75 77-76 の3-0で梅津宏治選手の勝ち


石川VS梅津4


 …負けた。


 ムチャクチャ悔しかった。


 今夜は僕と同じく石川と小学から高校まで同級生だったWと、Higege91の仕事仲間で昔「井岡弘樹」のファンだったと言うKちゃんとの観戦だった。


 南側での観戦となったのだが、Kちゃんは梅津応援団に負けないようにがんばって『黄色い声』で叫んでくれた。…が、彼女もまた三十路なので『緑色の声』だったかもしれない。


 …で、Wは隣の席にいた梅津側…として観戦していたらしいギャル3名の話を盗み聞き。


 ギャルA「…でもさ、なんだかあっちの選手の方がかっこよくない?」


 ギャルB「…そうよね、あたしもあっちの人の方がグッときちゃうかも」


 ああ、話をまとめましょうか。


 石川VS梅津5


 ランク奪取はならなかったわけだが、「完敗」ではなかった。


 序盤、多少調子に乗った梅津選手の流れを早い段階で断ち切れなかったのが痛かった。


 4Rの出だしがかなり良かっただけに、終盤大きな右ストレートを喰らって下がらされた場面が悔やまれる。また、巧さ、スピードでは石川だったのだが、体格差とパワーで押されてしまい、技術を駆使し切れなかったのも痛かった。…とは言え、ここが重要だと思うのだが、逃げずに打ち合う、また、打たれたら打ち返す…の姿勢、倒しに行こうと模索し続けた新しい『石川浩久』の前へ出るボクシング、打って出るボクシングが遺憾なく発揮されたラストラウンドは最高だった。従って、この際、アウトボックスは過去の戦法であり、今夜の充実は『新しい石川浩久』でしかなし得なかった…と見る。


 特にラストラウンドは梅津も必死だった…。


 …が、この最終ラウンドを結果的に制したのは石川浩久であった。


 4年前から『止まっていた時』が、例え僅かであろうとも、カチ、カチ…と動き出し、その秒針が刻み始めた音が聞こえたような気がしたのは僕だけであろうか…?


 年齢が年齢なだけに、その進退はまだわからない。


 しかし、今夜、ちょっとだけわかったことがある。


 決して『無難』でも『器用』でもなかった男がここまでこだわり続けたボクシング…というものについて。


 もしかしたら、自分と言う人間は理解されづらいと石川浩久が感じていたとするならば、ボクシングとは掛け値なしの『本当の会話』であったのではないか?


 損得のない、不条理のない、ただ本当のことだけで語り合うことのできた『本当の会話』であったのではないか?


 そして、生まれて初めて自分を晒せる場所として選んだのが、プロのリングであったのではなかろうか?


 Wを渋谷駅まで車で送りながら、あれこれ話した。


 昔の石川、昨日までの石川、そして、これからの石川…。


 では、僕にとっての「これから」とはなにか?


 わからない…が、少なくとも一番苦しい時に、一番辛くて痛い場面で僕は前へ出ているか? って言えば、まだまだよな、って思う。


 わかってるけど、こんなもんじゃないはずだよな、って感じてる。


 仕事も暮らしも…、なにもかも、みんな『言い訳』だよな…。


 石川浩久の今夜のラストラウンドは最高だった。


 ありがとう…と心の底から言いたい。


 随分と、たくさんの言葉で『会話』してもらったような気がする。


 御愛読感謝


 つづく