キーン コーン カーン コーン…
放課後の砂場で頭をガシガシ…と叩きつけている少年の姿が…
先生「ちょっと、そこの君、一体どうしたの!?」
少年は先生の声が聞こえないのか、両手をついたままひたすら額を砂に打ち付けている…
先生「こらぁ、やめなさ…」
先生、少年の身体を押さえつける…
先生「こらぁ…、って、あなた…」
シクシクと肩を震わせているのは顔中砂だらけのHigege91…
先生「…どうしたの?(…っていうか、この子はちょっと問題あるし、嫌だなぁ…)」
Higege91「せ、先生、ぼくはわからないです!!!」
先生「…そうよ、人生はわからないことばかりなのよ、大人になってもわからないことだらけなのよ…」
Higege91「…」
と、Higege91、再び砂場に頭を激しく打ちつけ始める…
Higege91「うわぁぁぁぁ…ん!!!」
先生「こらこら…、わかりました、聞いてあげるからやめなさい!!!」
Higege91「・・・先生、ぼくはわからないんだ、日本チャンピオンと東洋太平洋チャンピオンとどっちが強いんですか!? …日本は日本人の中で一番ってことで、東洋太平洋はアジア圏で1番ってことなんでしょ?…ってことは東洋太平洋の方が強いってことになると思うんだけど、パパがこう言ったんだ…」
先生「…なんて言ったの?」
Higege91「…6月27日に後楽園ホールで行われる日本王者VS東洋太平洋王者の王者同士のタイトルマッチは日本王者が勝つな…って言ったんだ」
先生「…ありえますね、それは確かに」
Higege91「なんで、どうしてそう思うの? ぼくにはわからないよ、全然わからないよぉ!!!」
先生「…いい? かつては東洋太平洋タイトル…の方が『格上』とされていたけれど、今やそうとも言い切れない…って感じね。ただし、東洋太平洋タイトルは世界ランクを上げるにはもってこいだし、足がかり…としてはハクもつくし、最高よね。…でも、日本王者の方が世界ランクが上の場合…もあるし、ケースバイケース…なのよ。それに選手同士が戦ってみないとわからないでしょ?元世界王者が元日本王者に負けることだってあるわけだからボクシングは『格』ではなくて、『実力』の勝負なのよ、だからあまり気にしないことね、『肩書き』に惑わされちゃダメよ、いい?」
Higege91「…そんなことわかってるさ、ぼくが悩んでいるのは27日の内藤VS小松の戦いなんだよ、パパがこう言うんだ、内藤が勝つ!!!…って、でもぼくはなんとなくモヤモヤしてるんだ、小松はハートで戦う男だからなぁ…」
先生「うーん、両者モチベーションは最高でしょうね、なんたって世界挑戦者決定戦…的な意味合いは相当に強いわね、それで二人ともあのWBC王者・ポンサクレックに敗れているわけだから…。じゃぁ、戦績見てみようか…?」
東洋太平洋フライ級王者 WBC12位
小松則幸 27歳 21勝9KO2敗5分け
VS
日本フライ王者 WBA7位 WBC7位
内藤大助 31歳 28勝19KO2敗2分け
先生「…KO率では圧倒的に内藤よね。黒星もポンサクレックと闘った2敗のみ、王者・ポンサクレックに二人とも負けてるけど負け方がちょっと違うのよね。内藤は2度負けてるけど、1度目は敵地タイで1R34秒痛烈KO負け、これは「事故の要素」もあると思うの、それで2度目は7R負傷判定…偶然のバッティングで内藤の流血が激しくて途中終了だったのね。KOはされなかったのね、でも、対する小松はポンサクレックには5RTKO負けだったのよね、世界挑戦試合と戦績だけで比べちゃうとやっぱり内藤有利…は動かないかもねぇ…」
Higege91「…パパも先生も全然わかってないや!!!
…と、Higege91、鉄棒に頭を打ちつけ始める!!!
ゴツン、ゴツン、ゴツン!!!
先生「Higege91クン、止めなさい、やめなさーぁい!!!」
Higege91、まるで、往年のプロレスラー、アブドーラザ・ブッチャーの如き流血顔で振り返る…
先生「…ひ、ひぃー!?」
Higege91「小松は『心』が強いって良く聞きますよね?」
先生「聞く、良く聞くわ(…っていうか、こ、恐い)」
Higege91「…血だるまになっても小松は戦うよ」
先生「…そ、そうよね(…なにも、自ら血だるまにならなくても)」
Higege91「序盤、内藤ペースで試合は進むと思うんだ、変則打法と激しい出入り、小松は戸惑うはずだよ。…パワーでは内藤だしね。…でもね、内藤は失速すると思う。しつこく、しつこく前へ出て闘えば終盤チャンスがやってくると思う。小松はずば抜けた武器はないと思うんだけど、その『折れない心』が最大の武器だと思うんだ。…正直、ぼくは中広大悟戦後に内藤がモチベーションを上げるのに苦労した…って話をインタビューで語っていたのを聴いて、こりゃぁ、次ぎ負けるかな…って思ったんだ。危険な相手だよ、小松は。でも、逆を言えば小松にも言えることだけど、序盤の立ち上がりあんまり効いちゃったらチャンスはなくなっちゃう。この戦い、技術的にもパワー的にも内藤だけど、『心』では小松と見てるんだ。こうして敵地・後楽園ホールへ乗り込んでくる心意気といい、『捨て身さ加減』といい、波乱が待っているような気がするよ…」
先生「…そ、そうかもしれないわね(…やめて、そんな血だらけの顔で瞳から目を逸らさずにそんなに長い台詞言わないで…!?)」
higege91「…先生はどう思うんだい? どっちを応援しているんだい?」
先生「あ、あたしは『ロマンティックが止まらない』が好きだから内藤選手…」
higege91「…」
…と、higege91、再び頭を鉄棒の支柱に叩きつける!!!
higege91「なんでだ、なんでだ、なんでなんだぁー!!!!」
先生「やめて、やめて、やめてー!!! あたしの為に苦しまないでー!!!」
ピタッ…と、higege91の頭突き運動が止まる。
higege91「先生、ぼくは先生のためだったら死んでしまったっていいんだ」
先生「…(ぞ、ぞくっ!! だ、誰か来て、た、たすけてー!?)」
higege91「負けたくないんだ、ぼくは誰にも負けたくないんだ、先生の部屋に何が貼ってあるか知ってるんだ。だから、ぼくは強くなるんだ!!!」
先生「…あ、あたしの部屋って?」
higege91「湯場忠志のサイン入りポスターと…」
先生「ぞ、ぞくぅ!?」
higege91「福原力也と…」
先生「ひ、ひぃぃ…」
higege91「伊藤俊介…の写真が貼ってあるでしょ!!!」
先生「す、すいません!!! でも、イケメンが好きなのよ、先生も人間なのよ、ハンサムに弱いのよ!!!」
Higege91「うわぁぁぁん!!!ぼくもハンサムに生まれてきたかったよー!!! そうしたらもっと人生も楽しかったんだろうな、うまく行ったんだろうな、あーん、あーん!!!」
先生「違うわ、しっかりなさい、人間の本当の『凄さ』ってそういうものじゃないのよ、そりゃぁハンサムにこしたことないけど、心が『誠実』でなければ無意味なのよ、折角のハンサムも、宝の持ち腐れなのよ!!!!…higege91クン、知ってるわ、あなたが毎日人知れずウサギ小屋のお掃除をしてくれてるって…、みんなが嫌がることを率先してできるなんて、大したものよ、自信を持って!!!」
higege91「せ、先生!!」
先生「…!?」
higege91「…ほ、本当?」
少年・higege91の視線の中に、なぜかクレイジー・キムの凄まじい殺気を感じた先生…
先生の心の声… でも、どうして? 34歳のhigege91くんはなぜ小学生なの!? さらにどうしてクレイジー・キムが頭に浮かんだの!? ああ、わからない、あたしが狂っているの!? そ、それともこの『世界』が狂っているの!? わからない、小松が勝つの!? それとも内藤が勝つの!? ああ、キムは世界挑戦できるの!? いやいや、あたしは川崎タツキのファンなのよ… 違う、違うの、あたしは誰なの? あたしって『存在』は果たして実在しているの!? …っていうか、これって、この世界が幻想でないなんて誰が証明できるの!? たすけて、たすけて、あたしがイケメン好きなのはママの影響なのよ、ママがメンクイだったばかりにあたしは歪んでしまったのよ…、ああ、 『人生』っていったい、何!? っていうか、無理よ、higege91クン、あなた、鏡見たことないのね…、わからないのね、あなたに勝ち目はないのよ、あなたは世界王者にはなれないのよ、そんなダブダブな水風船みたいな身体じゃ誰にも勝てないのよー!!!
higege91「…打倒イケメンがぼくの闘いだ!!!」
先生「…がんばってね(…早く家に帰して)」
先生、higege91の額から流れ落ち続ける流血を見つめて、呟く…
ブッチャー の 必殺技 は 毒針 エルボー ドロップ
…図に乗って「先生質問!!」シリーズを書いたのだが、必要以上に疲労してしまったhigege91。
人生はたった1度きり…
何事も挑戦し続けなくちゃ…
って思うのだが、いずれにしても、内藤VS小松の勝者と、亀田興穀がいつか試合をしてくれたらいいなぁ…
そして、いつかあのポンサクレックを倒すのが日本人であって欲しい…と切に願うものなり。
御愛読感謝
つづく