葉子、その愛… いつかの居酒屋談義について… | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

毎晩、CS放送で観ているアニメ「あしたのジョー2」でありますが、これが佳境に入ってまいりました…


ついに、あのホセ・メンドーサとの宿命の世界戦当日になりました…


あのウルフ金串が、いつかジョーを騙して借りたお金を返しに来て(これはアニメにしかない設定)、かつての少年院時代の仲間が集まり…


アニメ版の楽しさはこのような「創作」部分の楽しさがありますなぁ…


そして、ついに決戦の地、日本武道館へ…


その控え室に、白木葉子がやってきて…



さて、葉子の「屈折しながらも無垢な愛」がここで表現されるわけですが、それについて過去に書いたことあるのですが、それをもう一度貼ってみます…


05年12月27日に書いた内容…


=============================================


漫画の古典『あしたのジョー』を巡る居酒屋談議において、ギャルに否定された我々について


ジョー、真っ白な灰になる

 

 師走も押し迫り、街行く人々が肩をすくめ、顔をしかめて歩いてゆく。場所は渋谷の宮益坂下交差点辺り。

某居酒屋に僕たちはいた。映画の打ち上げが終わり、その2次会だ。

 

 一通りの決まりの猥談(…男女関わらず好きですね)も落ち着き、不意に始まった「漫画談議」。


 年齢40歳の美術部の男性(以下I氏)は僕、HIGEGE91が熱烈なボクシングファンであることを知っている。僕の車で移動することも多く、車内のボクシング雑誌の束も目にしていた。


 向かい合うは年齢24と26歳の衣装部・女子2名。


「『あしたのジョー』なんて絶対読まない、だって『立て-、立つんだ、ジョー!!』でしょ?それが?って感じ」


 ああ、この一言が火種となった。


I氏「…違うんだって、『あしたのジョー』を読まずして漫画は語れないんだよ、わからないかなぁ、つまり…」


衣装部1「…スポーツモノなら『スラムダンク』がいいし、古典っていうのなら『ブラックジャック』の方がいい、『あしたのジョー』なんて読みたくない」


 …I氏は口下手な方であり、さらにお酒も入っているので「思いの丈」がうまく表現できない。…この展開に黙っていられなくなったHIGEGE91…。


HIGEGE91「…でもね、『恋愛モノ』としての『あしたのジョー』の凄まじさは群を抜いているよ、本当に…」


衣装部2「しらないけど『NANA』の方がいいもの。それにそんな「暗い漫画」読んでがっかりしたくないもの」


I氏「違うんだってば、『白木葉子』がなんで『ハリマオ』を連れてこなくちゃいけなかったのか?そんで世界タイトルマッチを仕立てておいてどうしてそれを中止しようと奔走するのか?分かるはずなんだって、読めばわかるんだって…」


衣装部1・2「…(もうこの話題止めたいんだけど)」


I氏「『…葉子、葉子はいるかい?あんたに、貰って欲しいんだ…』ってあのグローブを差し出すジョーの心がわからないかな?」


衣装部1・2「…(もう電車なくなるから帰りたいんだけど)」


 …加勢したくとも圧倒的に無駄だったのでHIGEGE91は黙ってしまった。すまなかったIさん。


 しかし、僕が『ボクシング』に固執する根底に『あしたのジョー』があるのは言うまでもない。たかが漫画、されど漫画…ではなく、まごうことなく珠玉中の珠玉、後にも先にもこの『境地』に到達した漫画は他にはあるまい。


 「真っ白に燃え尽きるまで…」


 …とは、人間として生きるもの全て人の『テーマ』である。なにを望み、なんの為に『萌える』…間違った、『燃える』ために生きるのか?それは『永遠のテーマ』であり、とにもかくにもその『燃え方』、さらに『燃え尽き方』がこうも美しく、力強く『描かれた』漫画はないと言えるのだ…。


 ジョーは選ぶ。リングという四角いジャングルで闘う人生を…。宿命のライバル、「力石徹」との8回戦でプロ初の敗北を喫するも、その力石徹は試合後に死んでしまう。


 …立ち直るまでの状況も、克明に丁寧に描かれている。


 日本王座を奪取した名城信男選手が「世界挑戦者決定戦」で上位ランカーのプロスパー松浦と闘って勝利をもぎ取ったのは記憶に新しいところだが、この時賭けられた日本王座のベルトを奪取した際、前王者の田中聖二選手が実は試合後に亡くなっていたのだが、その「苦しみ」を乗り越えての「日本王座初防衛」さらに「世界挑戦者決定戦」での勝利は本当に感動した。生憎試合は大阪だったし、ずる休みできない状況だったので「生観戦」できなかったのだが、ジョーの力石戦後の状況と「ダブった」ファンも多かったことと思う。

 

 ジョーは相手の顔面(テンプル)を打てなくなってしまう。ボクサーとして「致命傷」を負い、さらにプロのリングからも干されてしまう。そして、「ドサ回り」に身を落としてまでもボクシングを棄てられない。


 そこで現れるのが新しいライバル「カーロス・リベラ」で、ジョーはカーロスと拳を交え、さらに深い「友情」を深めることで乗り越える。


 …が、そのカーロスが世界王者ホセ・メンドーサに「廃人」にされてしまう。


 ぐだぐだ書いてもみんな知っているストーリーだからもう止めますが、美術部のIさんはまっこと熱かった。普段仕事で接していてもあそこまで熱くなる方ではなかった。


 しかし、ギャルには通じなかった、というか、煙たがられた「あしたのジョー」熱であった。


 …で、ちょっと書きたいのは「白木葉子」の恋愛についてだ。財閥のお嬢様である葉子がジョーと出合ったのはジョーが「詐欺」を働いてそれにだまされた葉子が大金を寄付してしまうのが最初であったような。ジョーは浮浪児で愛を知らない。ジョーは段平に滅多打ちにされて少年院へ…。最後まで読むと、この時点で「葉子はジョーが気になる存在」であったような。しかし、まだそれは葉子自身も自覚できない微量なものであった…。


葉子…



 …力石徹は葉子を愛していたが、死んでしまう。葉子がかりに力石にプロポーズされたら話は「別のドラマ」になってしまう。結婚はしないだろうな。葉子は思慮深く、自分を曲げることのない女である。何事に対しても徹底的な女である。当然、葉子は力石に好意は持っているものの、それが「究極の愛」であるかどうか?って意味で寸分でも疑いが残れば結婚はしないであろう。

 

 …が、葉子の人生は「気になる存在」矢吹丈の生きる「線路上」に先回りしては待ち受けることで自分の人生を埋めて行くこととなる。

 

 ジョーが力石を殺してしまったことで心に傷を追い、再起できなくなりそうなとき、カーロス・リベラをベネズエラから招いたのは葉子で、その後も「殺し屋ジョー」のマッチメイクを支え続けるのだ。葉子がジョーを愛している…と分かり始めるのは「ハワイ遠征」あたりであろうか…。


 ジョーの砂浜を歩いた足跡が「蛇行」しているのに気付いてパンチドランカーの研究を始めるわけだが、そこからの執拗ぶりは尋常ではなくなって行く。権威のあるドクターに一旦「心配ない」と診断されてほっとするもつかの間、東洋王者となったジョーに野性味が足りなくなったと原住民ボクサー「ハリマオ」を世界前哨戦としてぶつける。ジョーはそれに野生で答えて打ち破るも、ここで急転直下、ドクターが誤診を認めてジョーがかなり重症な「パンチドランカー」であると宣告されるのだ…。

 

 葉子はジョーの世界戦を中止しようと毎日毎日ジョーを尋ねるも会ってもらえない。雨の日も風の日も立ちつづけるもジョーは葉子に会わない。

 

 ジョーは分かっている。ホセ・メンドーサのコークスクリューパンチを喰らったら、自分もあのカーロス・リベラのような「廃人」になってしまうことを…。

 

 …ついに決戦当日。


 ジョーの控え室に現れた葉子。葉子はジョーが「パンチドランカー」であるという衝撃の事実を伝える。

 

 …だからどうした?


 …!?

 

 ジョーはその全てを受け入れている。リングに上がる決心は揺るがない。力石も、カーロスも、みんなが戦って散っていったリングから逃げることはできない。

 

 …好きだったのよ、矢吹君、あなたが!!

 

 ああ、この告白シーンほど胸焦がされたシーンはない。

 

 …愛する人を廃人になることがわかっているリングに上げることなんてできない!!

 

 (…台詞は違っていると思いますがすみません)

 

 と、ここでジョー、葉子の両肩に手をおき、

 

 …世界で1番強い男がリングで待っているんだ、だから、いかなきゃ

 

 …ドンドンドン、おい、ジョー時間だ、おい、そろそろ時間だぞ!!


 …ありがとう

 

 そう言って、ジョーはリングに向かい、葉子は控え室に一人残されるのだった。


 ああ、思い出しただけでも凄い場面だ。そんじょそこらの「恋愛ドラマ」「恋愛映画」なんかよりも魂が震える。これに関して言えば、テレビアニメの出来も非常に良く、それは何度でも観たくなるし、「間」と「光」を取り入れた演出方法は抜群だ。映画版よりも編集されていない丁寧に作られたテレビ版の方がさらにいいかも。

 

 葉子は愛するものの人生に無意識の内に関わることでその「人生」を捧げた。しかし、その彼が結果として死に行く運命であり、その手助けをしていたともいえなくもないが、そうしなければ「彼」に関われなかった、という部分で葉子の果てしない『悲劇性』が僕の胸を激しく打つ。


 しかし、葉子は「処女」でジョーは「童貞」であろうと推測されるわけだが、そのプラトニック性もさらに美しさを昇華させている。


 葉子は恐らく、生涯「独身」を貫いたのであろうが、現実的に語れば、ジョーを失った心の「空洞」を埋めるために誰にでも身を捧げてメチャクチャしてそれでも癒されない…ってこともないこともないが、その後は出家してお寺で生涯生きるってのもあるかも知れない。いやいや、しかし、これほどまでにストイックな恋愛を実践してきた葉子はそんじょそこらの「恋愛」あるいは「誰か」では癒されないし、満足できないに決まっているし、それほどまでに「ジョー」はかっこよすぎるのだ。


 いやぁ、ただの居酒屋談議で美術部のI氏の悲しいエピソードを語るだけのつもりだったのに大作になってしまった。


 しかし、恋愛漫画「あしたのジョー」も最高である。


 ココまで屈折しながらも、純度の高い白木葉子の「恋愛」は現代の若いギャルの心を打つと思うのであるが、どうであろうか?

 

 …好きなら好きって初めから言えばいいし、どうして自分が「好き」ってことに気付かないなんて「鈍感よね」なんて言われなければいいなぁ。


 わかるよね、僕は痛いほど分かる。


 御愛読感謝。


 つづく


=============================================


 …あった、あったこんなこと、そういえば。


 これ、もう4年前か…


 さて、来週はついにホセ・メンドーサとジョーが戦うわけですが、これ、第1話からずっとダビングし続けています…


 凄い量ですが、歌を抜いてちょっと編集すると、4時間収録のDVDで全部で4~5枚くらいです…


 いつでもじっくり鑑賞できるなんて幸せ…であります。


 さて、ジョーとホセの激闘は確か3話くらいに渡って描かれていたような気がする…


 これは緻密にして強烈…


 楽しみであります…


 御愛読感謝


 つづく