新しい「テーマ」、作っちゃいました…
「ボクサーたちの、本当の気持ち」…っていうテーマであります。
実は、ちょっとした出来事があったのだ…
それは今月8月1日に大阪へ宮城竜太選手の再起戦を見に行った帰りの新幹線の中でのこと…
そこで偶然、以前一緒に仕事をしたことがある「助監督」なる珍妙な職業の彼と出くわしたのだ…
おっ、久しぶりだねぇ、今何やってるの…? へぇ、そうなんだ…
なんて、いう会話の後で、僕は思い出したのだ…
そういやぁ、この彼、実は「元ボクサー」だったって言ってたっけ…
でも、詳しい話はまだちゃんと聞いたことなかったなぁ…
僕「…あなた確か、昔ボクサーだったんだよね?プロデビューしたんだっけ?」
彼「してますよ、でも弱かったから…」
僕「プロの戦績はどうだったの?」
彼「…一戦一敗です」
僕「そうなんだ、その時、どういう内容だったの?」
彼「…最終回の4ラウンドでTKO負けだったんですけど、僕はもっとできるつもりだったんだけれど、なぜか止められちゃって…」
僕「…本人の感覚と、客観的な『見え方』ってかなり違う場合多そうだし、それは仕方がないんだろうね」
彼「でもですねぇ、その試合で戦った相手なんですけれど、その後でチャンピオンになったんですよ、名前なんていったかなぁ…」
僕「で、どこのジムだったんだっけ?」
彼「○○ジムです…」
僕「…って、その時代だったら当時世界チャンピオンいたんじゃない!?」
彼「いました、○○さんが世界チャンピオンでした、でも一度も口利いたことないですけど…」
僕「…イイ経験してるねぇ」
彼「…そうっすね、でも、試合では勝ったことないけど」
僕「何言ってんの、でも、『チャンピオン』にしか負けたことないって言えるじゃん」
彼「…え?確かにあの時負けた相手はその後チャンピオンになったけれど、でも、それって詐欺くさいじゃないすか?」
僕「どうして?でも間違ってはいないでしょう!!!」
彼「…なんかしっくり来ないな」
僕「…あはは」
…なんていう会話をしたわけですが、実はこの時、僕は34歳の宮城竜太選手の再起戦を応援するために大阪遠征をしていた帰りで、ちょっと、気になっていたことがあったわけですね。
その大阪遠征生観戦の詳しくは下記の赤文字をクリックして覗いてみてください…
大作だから読むのはちょっと大変だと思うのですが…
…っていう内容で、非常に辛い旅になってしまっていたわけであります。
大阪まで足を伸ばしたわけですが、応援していた宮城選手は僅か1ラウンド1:31でTKO負けを喫してしまったわけです…
で、気になっていたことがありまして、それは、残念ながらも「敗戦」を喫してしまったボクサーたちは、果たして、辛くとも応援者に声を掛けてもらいたいのか?それとも、放っておいて欲しいのか?
この辺りは本当に微妙だなぁ…って度々感じていたことなのだ。
もちろん、選手の気質や性格、その準備の出来と実際の試合内容等々…、その都度条件が変わるわけだから一概にどっちがよいとは断言できないわけだけれど、ただ、「一般論的」に言って、どっちなんだろう?ってずっと感じていたわけですね…
さらに、実はその辛い思いをした夜、超の付く大御所のボクシング観戦好きの大先輩と居酒屋で語る機会を得ていたわけですが、その方がこうおっしゃっていたことがずっと頭の中に残っていたのだ…
----私はこう考えているだ、負けてしまった選手にこそ、どんどん声を掛けてあげるべきで、ぜひ、そうしてやって欲しいってみんなに言ってきているんだ… 彼らボクサーたちは狭い世界で生きているわけで、普通の暮らしをしていれば経験できる事柄を、多くの場合犠牲にして戦っているんだ… つまり、不器用な連中なんだけれど、でも、そんな連中がそれでもボクシングをやってきて本当に良かったって最後に言えるのは、それは本当に『素晴らしい出会い』がたくさんあって、それが何よりの『宝物』だったって胸を張って言えるからなんだ… 私はそれをずーっと見てきたんだ、だから、勝った時も負けた時も、同じように連中に接してあげるべきだし、結果的に、それは連中のためになるんだよ…
うぅぅ…
なんていい言葉なんだ…
が、敗戦直後の選手に掛けてあげられる言葉っていうのは本当に探すのが難しいし、こちらも正直動揺してしまうわけであります…
で、偶然新幹線で鉢合わせた「元ボクサー」に質問したのだ、チャンピオンにしか負けたことのない彼に…
僕「…で、負けた時、応援してくれた人たちは何て言ってくれたの?」
彼「…え?なんか、惜しかったなぁとか、残念だったなぁとか、多分そういうことを言ってくれたんだと思うんですけど、実は…」
僕「…実は、何よ?」
彼「…実は、興奮もしてたし、パンチも効いてたんだと思うんだけど、全然何にも憶えてないんですよ!!!」
僕「え!?」
彼「…そういう負け方だったし、死ぬほど悔しかったし」
僕「…そうか、そうだよな、全力で死ぬ気で戦った直後だものな…」
彼「…へへ」
さて、で、僕は残念ながらその再起を失敗してしまった宮城竜太選手にメールを送ることにしたのです…
その敗戦直後の控え室で「残念だったけれど、まずはゆっくり休んでください」としか伝えられなかったからだ…
----昨日はお疲れ様でした その立ち上がり、やや竜太さんは硬そうに見えました… そこへ痛烈なカウンターを喰ってしまい、あれはかなり効いてしまいましたね… 本当に強烈な一撃でした… かつての竜太さんならば喰わないはずのパンチ、例え喰っても踏ん張りのきくパンチだったかもしれません… 今は何も考えられない、考えたくないかもしれません… じっくりダメージを抜きながら休んでください、そして、それでもこの現実とは向き合わなければなりません… 厳しいようですが、敗北の厳しい苦痛と苦悶とも打ち合わなければならないのも、プロボクサーの仕事の一部だと思います… 勝った選手と同じ数の敗れた選手が、この仕事に取り組む世界が、やはりプロの世界だと思います… この新しい敵に、絶対に負けずに頑張ってください!!!
と、思い切って僕はメールを送ったのだ…
その返信はしばらくしてやってきた…
そこには、遠路はるばるやってきてくれたことへの謝辞と、「がんばります」の一言が記されていた…
まだまだ、この新しい敵との戦いは続いているはずだ…
正直、僕にはボクサーたちの「本当の気持ち」はわからない…
接するたびに、こちらも困惑してしまう…
でも、思い切って、「声」を届けるべきのような気もする…
どうしてもオブラートに包んだような表現になってしまうことも多いけれど、でも、それでも頑張って欲しい…と感じている気持ちに、嘘偽りは微塵も混じってなどいないのだから…
御愛読感謝
つづく