1972年10月3日「輪島功一×マット・ドノバン」 世界ジュニアミドル級タイトルマッチ | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

1972年10月3日 日大講堂 


世界ジュニアミドル級タイトルマッチ


チャンピオン 輪島功一 


×


挑戦者同級5位 マット・ドノバン (トリニダート) 



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さて、日本人にもっとも愛されたボクサーって誰だろう?なんて大胆なことを考えると、白井義男さんやファイティング原田さんと並んで、やはり、この方を推挙される方が多いのではないだろうか…?


炎のチャンピオン…


輪島功一さん…ってのは、本当に凄いボクサーだと思う… 


1971年、当時のチャンピオンのカルメロ・ボッシを変則戦法で翻弄して15回判定で退けて王座獲得、その後通算6度の連続防衛を達成するも、強豪中の強豪、オスカー・ショットガン・アルバラードに15回に倒されて王座を失うも、再起後のリマッチでアルバラードを判定で撃破、雪辱を果たして王座返り咲きを達成、しかし、初防衛戦で迎えた韓国の柳斉斗に7回KO負けを喰らうも、不屈の闘志で再起を果たし、またまたリマッチを実現して雪辱を晴らす最終15回KO勝ちで復活!!!


凄いですねぇ…


しかし、この王座は初防衛戦で、ホセ・デュランに14回KO負け…が、3度目の王座返り咲きを目指して再起、しかし、当時のチャンピオンであったエディ・ガソに挑むも、無念の11回KO負けに屈し、ここでは奇蹟は起こらなかったのですね…


通算3度の世界王座獲得…


それも、ことごとく雪辱を果たしながらの王座復活劇…ってことで、当時の人々がだれだけ輪島さんに勇気を与えられたのかを想像すると、今なおブルブル…って感じで背筋が震えます。


さて、しかし、僕の生まれた年が1972年ってことで、まだ0歳児だったので、当然記憶などあろうはずはない…


でも、その当時の熱狂はボクシング関連書籍や沢木耕太郎さんの小説なんぞから今でも伺える…


で、このドノバン戦はボッシを倒して獲得した最初の王座の2度目の防衛戦にあたるタイトルマッチで、初防衛戦で輪島さんはドメニコ・チベリアを相手に1R108秒でKOして勢いに乗った状態だったそうです…


では、この一戦を辿ってみたいと思います…



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1R 両者右構え… 長身ボクサータイプのドノバンと上体を揺らしながら間合いを詰めてくる輪島のリーチ差は「30センチ」もあると言う… 輪島、肩の筋肉をほぐそうとでも言うのか、奇妙な動きをさせると、会場が笑いが零れる… そう、今か今かと輪島の動きに目を見張る… 「かえるパンチ」に「ねこじゃらしパンチ」…って言うんで、何が飛び出すかわからないのが輪島の「超世界レベル」の変則ボクシングだ… 輪島が正統派ボクサータイプのドノバンの懐に飛び込んでは左右ショートを見舞う… 一方のドノバンは長いジャブを持っているが、輪島はこれをいとも簡単にすり抜けると懐へもぐりこみ、左右ボディーを見舞う… 輪島のペースだ… 輪島は時折スイッチして見せながら奇妙なフェイントを織り交ぜ、その「独特」な攻勢で正統派を完全に翻弄した… 輪島10-9



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2R しかし、輪島の「勇ましさ」は本当に感動的だ… ドノバンの鋭いジャブに全く怯むことなくグイグイ…と前へ出続けては「30センチ」のリーチ差があるドノバンに向かって腕を伸ばし続ける…


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ドノバンは気後れしたのか? クリンチを多用してくる… 輪島のボディーにドノバン後退… 輪島、ドノバンにロープを背負わせて、攻勢を貫く… 輪島10-9


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3R 開始早々、前傾姿勢からいきなりの右フックをドノバンの左の打ち終わりに叩き込んだ!!! 



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さらに距離を潰して追撃の左フック!!! 



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ドノバンの腰が泳ぐ!!! ドノバン、クリンチに逃れるも輪島は容赦なくさらに左を顔面に捻じ込む!!! …と、褐色の身体は白いマットに沈んだ!!!  



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ダウン!!! 効いた!!! カウントが入る!!! 


ダメ、ドノバン、立てない…!!!


3回 0分53秒 KOで輪島功一選手の勝ち!!! 2度目の防衛達成!!!



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この時、輪島さんは29歳…


輪島さんは樺太出身で北海道へ移住し、また、非常に貧しく苦しい子供時代を送ったというが、その「ひょうきん」な人柄と持ち前の明るさは抜群で、誰からも愛されるキャラクターであります… 


若くして上京して肉体労働に従事、なんとプロデビューは25歳で、その翌年にはウェルター級新人王を獲得、さらに、日本王座までも奪取…


凄いなぁ…


なんというか、輪島さんって、とにかく凄いとしか言いようがない…


その愛くるしさと変則強打、さらに、その不屈の精神力…には日本中が痺れ続けたはずである…


当時、僕はまだ0歳児だったわけですが、今のようなボクシングマニアだったならば絶対「おっかけ」やってたな…


くくくっ…


その倒しっぷりといい、さらに、倒されっぷりといい、また、因縁の相手に「雪辱」を晴らし続けた根性と執念といい、輪島さんのボクシングキャリアって言うのは、本当に「日本人好み」なんですよね…


まさに、「国民的ヒーロー」とは、こういう人のことだと思うわけです…


さて、この試合の勝利者インタビュー後、懐かしの逸見正孝さんがこう切り出した…



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逸見さん「輪島さん、最後に、お客さんにサービスがあるそうですね…」


輪島さん「…え?」


逸見さん「歌を披露してくれるそうですね」


輪島さん「…え?」


と、演歌のイントロが流れ始める… 


-------♪「炎の男」


    

     ♪ 運否天賦じゃ男は負けだ 


        たとえ助けが欲しくとも 

       

        人に頼るな 自分で開け 


        押せば開ける 人生は~



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     ♪ 槍が降ろうと動きはしない 

  

        腹の据わった男なら


        急くな 騒ぐな 慌てちゃならぬ 


        明日は命の火と燃やせ~ 



ボクシング&ロック野郎    higege91の夜明けはまだか?


最高だ…


それに上手い…


聞き惚れる…


これ、輪島さんの「持ち歌」なんですね…


亀田兄弟の大毅選手が試合後に歌唱して非常に寒い印象を受けたわけですが、やはり、真の国民のスター、輪島さんが歌うと一味違う…


アリだな、これ…


僕はもっと聴きたい…って思っちゃいましたねぇ…


…で、一番、2番…と歌い終わったところで、3番に向かって輪島さんが準備して息を吸い込んだところで伴奏はいきなりフェードアウト、会場から笑いが溢れる!!!


いいなぁ、最高だな、こういうのって…


さて、改めて、「国民的ボクサー」という一言を呟いてみる…


強くて、勤勉で、賢くて、愛嬌があって、明るくて、そして、人々の心を掴んで離さない「人間力」を持っていて…


やはり、輪島功一さんは別格だな…


今夜は、「炎のチャンピオン」のボクシングと歌を堪能しました…


御愛読感謝


つづく