1989年12月10日「ブリーランド×尾崎富士雄」 WBA世界ウェルター級タイトルマッチ | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

1989年12月10日 後楽園ホール

WBA世界ウェルター級タイトルマッチ


チャンピオン マーク・ブリーランド 25W18KO1L1D

×

挑戦者 同級1位 尾崎富士雄 25W16KO5L 



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尾崎選手、2度目の世界挑戦は戦い慣れた地元日本の後楽園ホール…


28歳のデビュー10年目、尾崎が挑むチャンピオンはロサンゼルス五輪金メダルのグリーランドで、これが3度目の防衛戦にあたる…


この時点で、日本人の世界挑戦連続失敗は「17」まで伸びてしまっていたそうだ…



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この時から遡ること1年、尾崎選手の世界初挑戦は敵地・アメリカの地でマーロン・スターリングに挑戦するも判定負け、再起後、東洋太平洋王座を獲得してついに世界ランキング1位にまで這い上がってきた…


26歳のブルックリン生まれ、世界選手権優勝、五輪金メダル獲得…という超アマチュアエリートのチャンピオンですが、物凄くリーチありそうですねぇ…


スラリとして、懐もかなり深い…


ブリーランドの身長は188センチで、そのリーチは197.5センチ…


一方の挑戦者の尾崎選手、身長は175センチで、リーチが175センチってことで、身長で「13センチ」リーチで「22.5センチ」も下回っている…



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あいやぁ…


これが世界の「ウェルター級」でありますねぇ…


1R 両者オーソドックススタイル… その立ち上がり、鋭いジャブが尾崎の顔面を弾いた…っと、さらに長い右ストレートがこれに続いた!!! 


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うぉぉ、なんという鋭いパンチ!!! ブリーランド、このカミソリ級のパンチはかなり強烈だ… 尾崎、この立ち上がりであるが、ブリーランドのあまりにも長い「射程距離」の前に攻撃の突破口が見えない印象だ… ブリーランドはいきなりのチャンスを迎えてより積極的に打って出る!!! 左も右も命中する!!! いかん!!! ブリーランドの長身から振り下ろされた右カウンターに尾崎がバランスを失う…!! マズイ!! 尾崎のパンチは届かない…っ!!! 面白いようにブリーランドのジャブが尾崎の顔面に抉り込まれる!!! っと、ブリーランドが大きな右を空転させた…と同時に、尾崎がその懐に飛び込む!!! 会場から声が上がる!!! そうだぁ、『もぐりこめ!!!』…が、こちらも空振り… ブリーランド10-9



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2R 会場客席にはお母さまの姿も見える… 故郷の青森からはるばるやって来られたのだが、さすがの劣勢の前にうつむいておられる… しかし、アメリカからやってきたボクシングエリートのチャンピオンは容赦しない…!!!その懐で「乱打戦」に持ち込みたい尾崎だが、一発狙いでやや大振りだ… 冷静なテクニシャン、チャンピオンのブリーランドは的確にして鋭いワンツーを繰り出しながら尾崎を捌く…  ぐぐぐッ… ブリーランド10-9



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3R 尾崎、ブリ-ランドの長いジャブの戻り際に飛び込んで右を捻じ込んだ!!! さらに左も命中!!! …が、ブリーランドはすぐに距離を修正、遠距離射撃を復活、さらに、好戦的になって長い右ボディーフックから左アッパーカットを捻じ込んだ!!! くぉぉ!!! 尾崎の右瞼からおびただしい出血だぁ!!! ボタボタっ…っと鮮血が零れ落ちる…!!! レフェリーが一旦両者を分かつ… ドクターチェック…



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再開… っと、ここですかさずゴング… ブリーランド10-9


4R カットの傷は長さ4センチ… 尾崎、その右の視界は恐らく完全に封じられた… 開始直後から鮮血が溢れる… これ、あの長いジャブで弾かれ続けると止められる可能性は高い… 


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尾崎、それを肌で感じてか、勢い勇んで打って出る…!!! が、ゴングから40秒、ここで再びレフェリーがドクターチェックのために両者を分けた… 


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いかん… これ、続行不能ならば有効打による負傷TKOでチャンピオンの防衛成功…となってしまうが、ドクターの判断は…!?


尾崎陣営の作戦は「後半勝負」であった…


無類のテクニシャンの牙城を崩すには、そのスタミナが消耗され、僅かな亀裂のような小さな「隙」を見つけ、それをこじ開けるしか勝利の道は続いてはいないであろう…


最後まで戦い抜かせてくれ!!!


…が、ここで試合終了のコール!!!


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4R 0:35 TKOで勝者、WBA世界ウェルター級チャンピオン、マーク・ブリーランド!!! 


尾崎選手、無念…


しかし、本当に勇敢なボクサーでしたねぇ…


その蓄えた髭顔を評して、「和製デュラン」とも呼ばれた、という尾崎選手ですが、物凄く胸を打つ戦いをされる選手でしたねぇ…


前のスターリング戦は判定決着での敗北となったわけですが、しかし、全く怯むことのない勝利へのその雷のような執念には、本当に『感電』いたしました…


好きだなぁ…


尾崎富士雄さんには、改めて敬意を表したいと思います…


最高でした!!!


そして、当時のテレビ中継解説の浜田剛史さんの言葉ですが…


----いやぁ、10年も一緒に練習をしてきた選手でしたから、日本のボクシング界とかじゃなくて、とにかく、個人的に勝たせたかったですねぇ…


浜田さんのしみじみとしたその言葉、本当に胸に沁みてきましたねぇ…


そして、試合後の尾崎選手の言葉…


テレビアナウンサーの「悔やんでも悔やみきれないのではなかったですか?」の問いに対して…


----いえ、さっぱりしました


と、さばさばと答えた、と言う…


御愛読感謝


つづく