1998年3月29日「コウジ有沢×畑山隆則」 日本ジュニアライト級タイトルマッチ | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

1998年3月29日 両国国技館 

日本ジュニアライト級タイトルマッチ


チャンピオン コウジ有沢 18W15KO無敗

×

挑戦者 WBA3位 畑山隆則  20W16KO無敗1D



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あの日本人ボクサーとこの日本人ボクサーはどっちが「強い」んだよ…?


それも、どちらも「世界目前」だったらなおさらじゃぁないですか…?


こういう「疑問」ってのは、いつだってボクシングマニアの妄想を煽って止まないですよねぇ…


約10年前、そんな疑問に真っ向から答えを出すために戦った二人のボクサーの「名勝負」を今夜は見つめなおす…


無敗のボクサー同士による、文字通りの、まさに「世界挑戦者決定戦」…


無敗にして5度の防衛を達成している日本チャンピオン、繊細な顔つきだが激闘派の「大逆転ボクサー」コウジ有沢…


無敗にして東洋太平洋王座を獲得し、そして、世界挑戦を果たすも痛恨のドローという屈辱を味わった「天才」畑山隆則…


そんな二人の「激突」は今なお語り継がれる伝説的マッチメイクであります…


ファンもマニアも納得できる、「真の世界挑戦者決定戦」…っていうのは、実は本当に少ないのでありますね…


双方ファイトマネーは5百万円、さらに、勝った方にはもう5百万円追加で、さらにさらに、車まで貰えちゃう…っていう「日本タイトルマッチ」…


いいじゃぁないですか… 注目のタイトルマッチ、ってのはこうでなくちゃいけない…


さて、当時のテレビ中継の模様をもう一度見つめるわけですが、この大一番のセミファイナルに登場した、コウジ有沢選手の兄、カズ有沢選手ですがリック吉村選手にしか負けたことがなかったのですが、まさかまさか、7R、豪快に散った…


両者入場…


12連続KO勝利中の日本チャンピオンが勝つか? あるいは、無敗で世界挑戦を果たし、ドローに持ち込んだ挑戦者が勝つのか?


日本中が注目する「日本タイトルマッチ」…



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1R 両者右構え… ガードを固めてじっくり相手を見極めようとするコウジに対して、上体を軟らかく使いながら鋭いワンツーを淀みなく打ち込む畑山… 両者、初っ端から危険な中間距離の内側で勝負を開始する… 畑山の目にも留まらぬ左フックがコウジを打ち抜き、赤コーナーを背負わせて連打!!! コウジ、苦しみながらもカウンターの右フックで迎撃!!! コウジのワンツーが畑山の顎先を打ち抜く!! っと、畑山、すかさず打って出る!!! まさに、一進一退… が、ジャブの刺し合いでは畑山が優位であったか? 畑山10-9


2R 畑山の左は変幻自在だ… 脇から、あるいは貫くように、そして、不意に真下からも打ち抜かれる… 一方のコウジは実直に打ち抜き、そして、ボディー打ち…と丁寧に放ち続ける… 両者キビキビ…とリードブローを交換しながらも、徐々に、その引き出しの差が現れ始める… 畑山の、いきなりの左フックにコウジがよろめく…!!! さらに追撃のラッシュにコウジはロープを背負わされてしまう… しかし、畑山の「出入り」は凄いなぁ… この距離感は日本人離れしているよなぁ… 畑山10-9



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3R 劣勢スタートのコウジだが、その持ち味はしぶとさと「劇的逆転」である… 開始早々、そのコウジの右が畑山の顔面をまともに捕らえる!!! しかし、畑山も黙っていない… ジャブは依然として出せば当たる状況… そして、稲妻のように飛び込んで放つ左フック、さらに、距離がなくなった場面で真下から突き上げる右アッパーはコウジには反応できない… が、コウジの鋭い眼光はその輝きを増してゆく… 「逆転の貴公子」… 一発の右で試合の流れは一瞬で一変するのだ… しかし、ポイントは畑山か…? 畑山10-9


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4R 両者、足を止めての中間距離のやや内側でワンツーの打ち合い!!! 畑山がジワジワとコウジを押し込み、ロープを背負わせる!!! コウジ、しかし、下っても右ボディーを捻じ込む!! だが、畑山のコンビネーションは変幻自在、上下左右と打ち抜かれる!!! 左フックをトリプルで打ち込み、さらに右を打ち下ろした!!! コウジ、効いた!!! …が、怯まない!!! チャンピオンの意地!!! 畑山10-9 


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5R 畑山の左フックが炸裂!!! コウジ、これをなんとかガードしているが、モロに喰ったら本当に危ない… 畑山の距離、畑山の流れで試合は完全に推移している… が、コウジはしぶとく右ボディーを捻じ込み、そして、必殺の右クロスを虎視眈々と狙い続ける… 畑山のジャブが一発、二発…と当たってコウジの顔面が跳ね上げられる… 三発、四発、五発!!! …その鋭さに場内がどよめく!!! コウジ、苦しい!!! 畑山10-9



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6R コウジ、目をぎらつかせてジワジワと前に出る… 畑山が足を使って迎撃戦法に切り替えた… と思いきや左フックで飛び込む!!! 巧い!!! が、コウジの右クロスが貫かれる!!! 一発で試合の流れは変わる可能性は大いにあるのだ!!! しかし、畑山はアッパーカットを織り交ぜた煌びやかなコンビネーションからコウジをコーナーに詰める!!! しかし、畑山の殺傷能力は尋常ではない領域であるにもかかわらず、コウジはしぶとい… 目をぎらつかせて執念を発揮!!!  この闘魂が止めをささせないのだ… 畑山10-9



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7R コウジのワンツーから右ボディーが綺麗に入った!!! 畑山、背を丸めた!!! 終始劣勢に立たされ続てきた「逆転の貴公子」のパンチが、「天才」を押し返し始めた!!! 打ち合いで互角以上に輝き始めた!!! コウジの右フックから続けて放たれた右アッパーに畑山のバランスが乱れる!!! あるのか、逆転はあるのか!? コウジの右クロスが入った!!! 会場が沸く!!! 押し込み続けられるか!? …と、畑山の飛び込みながらの左アッパーがコウジのガードを割った瞬間、ん…!? コウジ、真っ直ぐ下った… これと同じようなパンチは再三浴びていたが、しかし、全く怯む様子はなかったのに… コウジ、なんとか凌ぐも、この「一瞬」に不穏が潜んでいるような気がした… が、ついにコウジがポイントを奪った!!! コウジ10-9


8R 畑山は距離を操る… コウジの気迫が畑山を押し返し始めた… 畑山の左フックから右アッパーがコウジを打ち抜く…が、コウジはすかさずワンツースリーフォー!!! と真正面からぶち抜き返す!!! 物凄い闘魂!!! もう相当なダメージを負っているはずだ…が、真っ向から打ち合う!!! 畑山もこれに応じる!!! 隙を見せたら飲み込まれる… 「天才」の勘が、逃げるな…とそう告げていたのだと思う… 畑山10-9


9R コウジ、朦朧としながらも、しかし、その気迫の充実は驚異的であった… 倒す、倒して「世界」へ挑む!!! 真っ向勝負で打ち勝つ!!! 倒して勝つ!!! 



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が、畑山の左ボディーを喰って背中が折れた次の瞬間、続けて放たれた右フックに大きくバランスを崩し…



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よろめき、追撃のワンツーを浴ると、ついにマットに這ってしまった… 



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しかし、なんとか立ち上がる…  再開!!! が、「天才」は絶対にチャンスを見逃さない!!! 畑山は猛烈なラッシュでコウジをコーナーに追い込む!!! コウジ、しぶとくクリンチ… これは効いてる… 



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レフェリーが二人を分かつ… そして、再開… 畑山のラッシュにもうはや棒立ちになったコウジを救う形で、レフェリーが試合終了を「宣言」…


9R 1:44 TKOで、勝者、日本ジュニアライト級「新」チャンピオン、畑山隆則~!!!



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これは凄い戦いでしたね…


しかし、畑山さん、本当に「クレバー」にして、「熱い」ですねぇ…


そして、敗れたものの、多くの方々の心に、その「闘志」を刻み込んだコウジ有沢さんの「ガッツ」ですが、これ、驚異的でしたね…



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日本人同士による「世界挑戦者決定戦・日本タイトルマッチ」ですが、これ、生中継で両国国技館開催という異例中の異例の注目を集めたわけですが、こういう『サバイバルマッチ』をファンは純粋に求めているのですね…


ただ、「熱くなれる試合」を観て、そして、「熱くなりたい」だけ…


これ、基本中の基本ですねぇ…


最近では、日本チャンピオン対東洋太平洋チャンピオン…なんてカードが珍しくありませんが、しかし、これほどの盛り上がりは見られないですね…


スター選手の不在もあるのでしょうが、日本中を巻き込むほどの「世界挑戦者決定戦」ってのがイイじゃぁないですか…


そして、畑山さんは次戦で宿敵のチェ・ヨンスを判定で下してついに「世界チャンピオン」となり、さらに、ライト級でも王座獲得、そして、これまた伝説の「日本人対決」、『坂本博之戦』を実現して行ったのですねぇ…


一方のコウジ有沢さんは王座決定戦でパンサー柳田選手と戦って王座奪還して連続6度防衛、7度目の防衛戦でキンジ天野選手に敗れるも、さらに、本望信人選手の保持していた日本王座に挑戦、これは残念ながら失敗に終わりましたが、本当に名勝負をたくさん生み出しましたねぇ…


素晴らしいだけじゃなくて、なんというか、大変「意義」のあるタイトルマッチを今夜は再検証しましたがいかがでしたでしょうか…?


最近ではフェザー級の「榎×粟生」とかがこれに近い規模の注目のサバイバルマッチとなりましたが、内容はさすがにこれには及ばなかった…ですが、「意義」は大いに肌で感じられた…


胸躍る「日本人対決」ならば大いに結構であるし、そして、安易な世界挑戦よりも、ギリギリの「世界挑戦者決定戦」の方が実は需要があるのではないか…? とも思っちゃいますねぇ…



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しかし、これはこの両者が圧倒的なスター性と実力を持ち合わせていたからの盛り上がりであったことが「奇跡的」であったことも考慮しなくちゃいけませんね…


まさに、「珠玉」の、「奇蹟」の、そして、「究極的」な『日本タイトルマッチ』を今夜は見つめなおしてみました…


御愛読感謝


つづく