1988年 7月9日 川越市民体育館
WBC世界ジュニアバンタム級タイトルマッチ
チャンピオン ヒルベルト・ローマン 48W34KO4L1D
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挑戦者 同級6位 内田好之 21W19KO2L1D
埼玉生まれの僕としては、改めて、なんだかぐっと来てしまう…
埼玉県で開催された初めての世界タイトルマッチがこの試合だったという…
川越市の隣町、上福岡市生まれの世界挑戦者、内田選手はデビュー戦こそ黒星だったが、そこから連勝街道を大驀進、全日本新人王獲得…が、日本フライ級王座挑戦を果たすも、判定負け…しかし、階級を上げてジュニアバンタム級で日本王座を獲得、即返上の世界挑戦…
一方のチャンピオン、ヒルベルト・ローマンといえば、あの渡辺二郎さんから86年3月に世界王座を奪ったボクサーですねぇ… で、一度王座陥落するも、再び世界チャンピオンとなって、その2度目の世界チャンピオンとしての、初防衛戦がこの内田選手との試合でした…
１R 両者右構え 鋭いジャブの応酬!! ローマンの左が的確、内田は思い切りよく右を捻じ込むも単発… グローブはメキシコ製の6オンス… はぁぁ… これは効きそうですねぇ… 内田、スピードとテクニックで劣ると評されるも、しかし、勇敢に右を打ち込むチャンスを待つ… ローマン 10-9
２R ガッツ石松さんがトレーナーとして付いている内田陣営… 当時の中継からもその威勢の良い声が響く…
「左から行け、左だ!!!」 チャンピオン・ローマンの鋭い左は淀みなく打ち抜かれ、それは抜群に伸びてくる!!! 内田、空回り… ローマンは距離を残しながら当てて離れる巧いボクシングに徹しはじめた… と、内田の打ち終わりにアッパーカットを打ち込んだローマン、その刹那、挑戦者の左ブローがカウンターでヒット!!! 単発だが、こんな一発を突破口にチャンスを掴むしかない… しかし、ローマンのジャブは伸びるし的確… ローマン10-9
３R 内田、捨て身のダイレクトライトを捻じ込む!!! そして、グングンと距離を潰しに掛かる… が、ローマンはフットワークを駆使、的を絞らせずに的確な左ジャブでポイントを重ねる… 内田、手が出ない… 距離もスピードもチャンピオンが上… 自分の戦いが見えない… 本来の自分が発揮できない… そんな重い空気が流れる… なんとか突破口を見つけ出したい… 気持ちばかりがはやる…
そんな刹那、チャンピオンの一瞬の隙を付いて内田の右クロスが命中!!! チャンピオン、一瞬怯む、追撃の右がもう一発命中!!! …とここでゴング!!! これ、ポイントを奪うにはいたらずも、しかし、かなりの手応えがあったのではなかろうか…？ ローマン10-9
４R ガッツ石松トレーナー「このRで勝負しろ!!!」 内田が捨て身の猛攻!!! テクニックとキャリアではどうせ劣るんだ… ならば自分のペースに強引に持ち込むしかない!!! ドロドロの泥沼、被弾覚悟の相打ち、その果てに僅かなチャンスが残されているなら、それを掴んでやろうじゃないか…!? 内田、テクニシャンのローマンを追い回してパンチを放ち続ける!!!
と、ラウンド開始１分経過直前、バックステップするローマンに左ストレートを命中させる!!! ローマン、背中からマットに沈んだ!!! ダウンだ!!! 執念の猛攻がついに実った!!! ローマン、しかし、冷静な表情で立ち上がる… ダメージは浅そうだ… タイミングのダウンだ… 内田、ここぞとばかりに「肉を切らせて骨を断つ」的な勝負に打って出る!!! 「チャンピオンになるにはこの勢いを大爆発させるしかない!!!」 …が、ローマンの的確なパンチに晒され続けた内田の顔面はすでに変形を始め、また、ダメージもかなり負わされてもいた… なんとか奪ったダウンをきっかけに勝負に出た内田だが。逆にローマンの鋭いコンビネーションの大逆襲に遭ってしまった… 長い左ジャブから続く右ストレートを浴びると、ロープを背負わされる!!! 内田、さらに被弾、思い切って大きな右を打ち込むも、空転!!! チャンピオンは冷静だ…!!! 内田、ピンチ!!!
なんとかリング中央へ出るも、その大振りパンチに右アッパーをカウンターで突き上げられた!!! ローマン、なんという冷静的確!!! ここでゴング…!!!
あぁ…
チャンピオンからダウンを奪った挑戦者の顔であるが、瞼は重く垂れ下がり、そして、鼻と口からは鮮血が溢れている…
チャンピオンをマットに這い蹲らせたのに、しかし、大劣勢の挑戦者… 内田10-8
５R 開始早々、チャンピオン・ローマンの左ジャブを浴びていきなり膝が折れた挑戦者、もろくもダウンしてしまう…
なんとか立ち上がるも、前の５R終盤にすでにダメージの深刻はピークに達していたのは明らかだ…
再開!! その直後、チャンピオン･ローマンは振りかぶって右を叩き込んで挑戦者を下がらせると、ワンツーからカウンターの左フックをまともに浴びた!!!
グワシャァァ!!!
ドシャァァ…!!!
リングサイドのガッツ石松トレーナーが叫ぶ!!
意識はすでに混濁しているであろう挑戦者・内田であったが、なんとかそれでも立ち上がった…
凄い… あのパンチを喰って立ち上がるなんて…
が、もう立ち上がっても、「勝機」は限りなく薄い… しかし、それでもなお戦うのがボクサーという生き物なのだ…
が、レフェリーはここで試合をストップ…
うぉぉ…
５R 0分39秒 ＴＫＯ勝利で、チャンピオン ヒルベルト・ローマン、初防衛成功!!!
挑戦者は、まさに、文字通り、潔く「散った」…
しかし、よく立ち上がったなぁ…
当時の予想で「９－１」だなどという圧倒的不利予想をあげた関係者もいたそうだが、しかし、全身全霊の闘魂を発揮した内田選手、４Ｒにダウンを奪ったわけですが、ダメージを負わせる性質のパンチが命中したわけではなかった…
が、そこが「勝負処」であった…と挑戦者は感じたわけですが、しかし、その直後の逆襲は壮絶であった…
しかし、あの局面で前に出なくていつ出てゆくのか？
あの局面で思い切らなくて、いつ思い切るのか？
その「潔さ」は実に清々しかった…
これも、「名勝負」だよなぁ…
最近は「世界挑戦」に漕ぎ着けるも、思い切り「戦いきれない」、本人も観客も「消化不良」なタイトルマッチに出くわすことが正直ある…
このタイトルマッチを観て、敗れるにしても、思い切って敗れることの、「壮絶なる美しさ」を感じました…
ローマンの、止めの左フックカウンター…
あれを喰って立ち上がった内田選手、物凄い執念であった…
御愛読感謝
つづく