1991年10月14日 ダイアモンドグローブ
後楽園ホール
日本ジュニアライト級選手権
チャンピオン WBA7位 WBC10位 赤城武幸 14W8KO1L
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挑戦者 同級1位 渡辺雄二 6W6KO無敗
超満員の、3200名ものボクシングファンが詰め掛けたという、この夜の聖地・後楽園ホール…
当時チャンピオンの赤木選手は超の付くアマチュアエリート、デビューから6戦で日本王座を獲得、で、3度防衛を果たすも、4度目で防衛失敗、しかし、再起を果たして以前王座から蹴落とされた古城賢一郎選手に再度挑戦、ここでリベンジを果たして2度目の日本王座戴冠…で、この試合が3度目の防衛戦…
一方の渡辺選手、未だ無敗の6戦6勝オールKO、プロキャリア僅か1年5ヶ月の超ハードパンチャー、ボクシング界期待の新星…
この懐かし映像ですが、VTRでお借りしているものなのですが、流石に年代モノのためか、我が家のビデオデッキとの相性が悪いのか、トラッキングが合いきりません…
が、緊張感伝わってくる、その背景も抜群のタイトルマッチですねぇ…
で、これ、昔のフジテレビ「ダイアモンドグローブ」なんですが、タイトルマッチ表記ではなくて、「選手権」なんて呼び方してるんですねぇ…
17年前の「選手権」試合…
1R 両者右構え 強打が武器の挑戦者、渡辺がジリジリとにじり寄り、テクニシャンのチャンピオンが距離を取って慎重に探ってゆく…という立ち上がり 挑戦者の渡辺、慎重すぎるチャンピオンの懐へ潜り込んで単発の右!! 浅い… チャンピオンの赤城、コーナーを背負って渡辺のコンビネーションを浴びる が、とっさにクリンチ!!! おおおお…っ!!!
リングの反対側までもみ合ったまま押し返した… まだ、噛みあわない… レフェリーが両者を分ける、再開… っと、渡辺の鋭い左フックが赤城の顔面を捕らえた!!! さらに追撃っ!! 解説の矢尾板さんの採点は『イーブン』かぁ… 僕は挑戦者優位に見えたでしょうか? 渡辺10-9
2R 攻めっ気たっぷりの挑戦者渡辺を、老獪にクリンチを駆使、そんなはやる気持ちに水を差しながら距離を保ち、左リードに左ボディーブローを打ち込む冷静なるチャンピオンの赤城…
赤城のワンツーが抜群の中間距離で真正面から渡辺を貫いた!!!
クリーンヒットっ!!! 行け、今だ!!! 畳み込めっ!!!
…と、チャンピオンの「本能」は叫んだに違いなかった
赤城は自らの右拳に残った「手応え」を実感、追撃の右アッパーを突き上げるもこれは空を切る… さらに追撃の左フックを打ち込んだ瞬間…
ゴヒッ!!!
挑戦者渡辺の左フックカウンターを逆に浴びてしまうっ…!!!
ストン…
チャンピオン赤城、マットに両膝を落としてしまった…
が、立ち上がる、そして、再開…
挑戦者の渡辺、ここぞとばかりに攻め立てるも、攻めが大き過ぎる…!!!
しかし、赤城、ダメージは深そうだっ!!! 膝に力が入らない印象、クリンチで凌ぐ、凌ぐ、凌ぐ…
ビシッ、ガツッ!!!
挑戦者渡辺の全戦全KOのハードパンチを正面からまともに喰ったぁっ!!!
チャンピオン、吹っ飛ばされて背中からマットに沈んだっ!!!
が、すぐに立ち上がる… もう2度もダウンを喫してしまった… 後がない… もう一度倒れたらチャンピオンベルトは奪われてしまう…
残り30秒…!!!
挑戦者が豪腕を振るう!!! チャンピオンがしがみつく、しがみつく… 挑戦者、それを払いのけて強打を捻じ込む!!!
右、左、右っ!!!
チャンピオン、それらをまともに浴びて後退、後退っ…!!!
ドオオオ…ン!!!
2RKO勝利で、新チャンピオン、渡辺雄二!!!
いやぁ、面白いっ!!!
こういう試合って本当に面白いですねぇ…
改めてボクシングの醍醐味を味わいました…
さて、豪快に7戦全勝オールKOで日本王座を獲得した渡辺選手ですが、防衛戦を一つこなしてこの王座を返上、そして、当時のWBA世界ジュニアライト級チャンピオン、ヘナロ・エルナンデスに挑むも6RTKO負けに散ってしまうんですよね…
が、しかし、再起後は階級を一つ下げてフェザー級で東洋太平洋王座を獲得、2度防衛して当時のWBAフェザー級チャンピオン、ウィルフレド・バスケスに挑むも、やはり、世界の壁は厚かった… 5RTKOに散ってしまうんですよねぇ…
それでも渡辺選手は諦めずに戦い続け、当時バリバリの世界チャンピオンj候補だった長島健吾選手の持つ東洋太平洋スーパーフェザー級タイトルに挑戦、これ、打たれまくって10RTKO負けでした…
個人的にはこの試合が特に印象的でした… ブンブン振るけれど当たらない… 逆に小刻みにテンポ良くビシビシ打ちまくる長嶋選手の攻撃は百発百中… 苦しい試合だったなぁ…
いつかの超新星が、新旧交代の波に飲まれる…っていう印象もありましたねぇ…
が、渡辺選手、この後に東洋太平洋ライト級チャンピオンに輝き、そして、初防衛戦で韓国の柳に3Rで豪快に倒され、これがラストファイト…となったのですね。
で、今回取り上げた懐かし名勝負のもう一人の主役、赤城選手でありますが、この豪快なる敗戦の後に再起、そして、3度目の日本王座獲得を王座決定戦で果たすと、その勢いに乗って東洋太平洋王座獲得に挑戦、が、フィリピンのタイガー・アリに10RTKOで破れて、これが最後の試合になったようですね…
しかし、今は赤城ジム会長として活躍されているんですねぇ…
さて、改めて、ボクサーたちの、タイトルマッチの、「光と影」に痺れちゃいましたね…
そして、いつかの「ホープ」が、気がつけば「あの時のホープ」になってゆくわけですね…
ちょいと残酷だけれど、でも、この「刹那さ」と「切実さ」こそがボクシングの『芸術性』をより高めているんですよねぇ…
そんなことを感じる、いつかの名勝負でした…
御愛読感謝
つづく