1999年11月21日「ネストール・ガルサ×石井広三」 WBA世界SB級タイトルマッチ  | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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人生の曲がり角に遭遇したボクシング&ロック・マニアhigege91。暇を見つけてはホール通い。ああ、俺は戦っているか!? ああ、俺は俺の求める『俺』に近づいているのか!?

1999年11月21日 

名古屋市総合体育館 レインボーホール


WBA世界スーパーバンタム級タイトルマッチ


チャンピオン ネストール・ガルサ 

36W28KO1L メキシコ

×

挑戦者11位 

石井広三 21W14KO1L



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世界初挑戦の石井選手、獰猛なる『メキシコの虎』の異名をとる2度目の防衛戦のチャンピオン、ガルサに挑む…


身長、リーチ、そして、その年齢は22歳同士…とほとんど「同じ」両者によるタイトルマッチ…


が、当然ながら、その「肩書き」は天と地ほどの圧倒的『大差』が横たわる…


メキシコのチャンピオンと、日本の挑戦者… 


東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルをを王座決定戦で僅か1RTKO勝ちで奪い、そして、掴んだ世界初挑戦のチャンス…


---12Rまで戦うつもりはない… 


両者、試合前にそのように断言していたというこのタイトルマッチ…



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1R 両者右構え 挑戦者の石井、一発に力を込めて大きなパンチを振るう 右オーバーハンドに左ボディーフック!!! チャンピオンは冷静に左ジャブ、そして、鋭く踏み込んで右アッパーカット!!! 早くも両者にとって「危険な距離」での戦いに突入… 



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っと、思い切って踏み込んだガルサの顔面に挑戦者石井の右フックがカウンターとなって命中!!! さらに、両者足を止めての打ち合い!!! 石井10-9


2R 一発強打で試合を終わらせる気マンマンの挑戦者石井… 恐らくはR1に手応えを掴んだはず… しかし、ガルサは距離をやや残して中間距離をキープ… と思いきや、残り1分過ぎた場面でガルサは思い切って石井の強打を掻い潜り、その懐に潜り込むと左右アッパーを捻じ込むっ!!! 



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石井の顎が上がる!!! 巧い!!! 石井もなりふり構わず打ち合いの渦中に飛び込むっ!!! イイ打ち合いだ!!! ガルサ10-9


3R  僅かに距離を残した緊迫の中間距離、そのつばぜり合い… ジャブの刺し合いはチャンピオン有利か? 挑戦者はその強打が武器であるが、やや狙いすぎ、大きすぎか? それが空を切る… 



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と、挑戦者の右ストレートが慎重になっていたチャンピオンの顔面に貫かれた!!! 追撃の左右連打!!! が、「虎」の異名をとる勇敢なるチャンピオンはこれを正面から迎え撃つ!!! 足を止めての打ち合い!!! 石井10-9


4R 当時の解説は若かりし大橋秀行さん… 


「打ち合いでも石井くん優位、石井くんのペースになっていると思いますよ」 



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石井のワンツーにまっすぐ下がったチャンピオン!! 石井は左右連打でガルサをコーナーへ追い込む!!! 思い切りの良い左右フックを振り回す石井!!! が、チャンピオンはその大振りの内側を狙って抉りこむような左右アッパーカットを虎視眈々と狙い続ける… 流れ的には挑戦者石井の猛攻が優位に映るが、しかし、まだわからない… ガルサは左のショートアッパーを石井の顔面に、あるいはボディーに…と打ち分ける!!! 石井のパンチは見栄えこそいいが、やや単発感もある… と、ガルサのパンチの方がクリーンヒット数で挽回し始めたか?という場面、石井、被弾をものともせずガルサをグングンとコーナーへ押し込んでゆく!!! 石井、いい根性だっ!!! が、根性だけでは「世界は獲れない」… しかし、採点は的確なクリーンヒット数で上回ったガルサか? ガルサ10-9



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5R 開始のゴングが鳴ったその直後、チャンピオンガルサの長いワンツーが挑戦者の顔面を射抜いた…と、それを皮切り両者一発を恐れぬハイリスクな打ち合いに突入!!! 互角の打ち合い!!! 二匹の虎が噛み付き合う!!!被弾を恐れぬ挑戦者石井のアグレッシブの前にチャンピオンガルサはやや下がられたか… 石井10-9


6R しかし、「タフ」な打ち合いを辞さない勇敢なるチャンピオン… 挑戦者石井は「根性」を武器に消耗戦の渦中に自ら飛び込む… テクニック、滑らかなるコンビネーション、そのバリエーションと淀みなさはチャンピオンが優れているが、しかし、その闘魂を前面に打ち出して怒涛のアグレッシブを真っ正直に発揮した挑戦者、ここはそのアグレッシブが有効… 石井10-9


7R 開始ゴング直後、挑戦者は自らの右拳をグルグル…と回しながらチャンピオンに近づくと、思い切ってワンツーを放ちながら大きく踏み込んだ!!! 当たった!! チャンピオン、真っ直ぐ後退… コーナーに閉じ込めた!!! チャンス!!! 石井、ここぞとばかりに渾身のど根性連打!!! が、その大きく振りかぶった右フックよりもコンマ数秒早く貫かれたのはチャンピオンの左フックであり、それは挑戦者石井の顎先に命中した… 



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勢い全開の挑戦者、カウンターを絶妙なるタイミングで喰うと膝が折れる…っ!!! 倒れるか!? いや、なんとか持ち直した!!! クリンチで凌ぐ!!! っと、挑戦者は再び驚異的なる「捨て身」を敢行!!! やや打ちつかれた感もあったチャンピオンの顔面に左右連打をまとめて捻じ込み、ロープを背負わせた!!! 


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凄いっ!!! こんなことってあるんだ…!? 


これが「闘魂」の爆発…ってやつだ!!! 両者頭をつけての打ち合い!!! しかし、チャンピオンのダメージはかなり深い… パンチを放てばその身体はバランスを失ってしまうほどだ… 逆転のポイント奪取!!! 石井10-9



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8R 挑戦者、倒す気マンマンで打って出る!!! チャンピオンは疲れている、スピードも落ちている… 行ける!!! 馬力で定評のあったチャンピオン・ガルサが、日本の闘魂に後退を余儀なくされている驚異の展開…!!! 挑戦者がチャンピオンを「押し潰そう」と前へ前へと出てゆく… チャンピオン、ロープを背負う… 挑戦者、なりふり構わず打って出る!!! と、ゴング直前、自らの左に合わされたガルサの左フックを喰った挑戦者の石井、一瞬、足が止まった… 効いてる… やはり、勢いでは勝っていても、挑戦者も相当な被弾とダメージを蓄積させているのだ…  ポイントは奪ったが、挑戦者、非常に際どい消耗の極地にあるようだ… 石井10-9


9R 完全なる消耗戦… 両者身体が流れながらも、膝を揺らしながらも、その一瞬に込められる全ての力を打ち込む驚異的な展開!!! 押せば倒れるような…そんな風にも見える両者、しかし、その闘志は燃え盛り、限界ギリギリの領域で渾身のブローをまさに全身全霊で打ち込みあう… 


あぁ、なんという素晴らしい打ち合い…


これぞ、精と魂が余すことなく練り込められた、意地と意地、執念と執念の、漢と漢の崇高なる殴り合い…


互角10-10


10R 挑戦者はスタミナ配分無視の前進アグレッシブをこれまで発揮し続けてきた… そして、そんな捨て身を駆使した作戦以外、勇猛なるチャンピオンと互角に戦える部分も見出せなかったのかもしれない… このラウンドも自らの体重を前傾姿勢に委ねて、そんな僅かな勢いさえ利用しながら前に前にと打って出た… 一方のチャンピオンもまた消耗の極地にあったが、そのコンビネーションにはある種の淀みなさとキレをまだ幾分残していた… しかし、挑戦者のパンチにはそのような付加価値が失われていた… 挑戦者はその驚異的なる執念と闘魂においてのみ、その一瞬だけチャンピオンよりも優位に見えたが、しかし、パンチの死んでいないチャンピオンのボディーフック、さらに、カウンターの左フックを喰い、一瞬ではあるが、身体が止まってしまうほどの消耗を隠せずにいた… ガルサ10-9


11R  挑戦者石井の左ジャブがチャンピオンに続けざまに命中… 会場がどっと沸く… まだまだ石井には「力」が残されているのだ!! まだまだ充分戦えるだけの「スタミナ」も、そして、「根性」も残されているのだ!!! なんだか、そんな風に聞こえる観客の熱狂… 両者頭をつけての打ち合い… そんな時、チャンピオン・ガルサの左フックが綺麗に石井を捕らえる…!!! 抜群のタイミング!!! 石井、一瞬よろめく…が、踏ん張る!!! 背を丸めて、再び前へ前への構えだ…っ!!! 押し込む!!! が、チャンピオンの左アッパー、左フックが石井に容赦のない追撃を与える!!! 石井、よろめく…が、前へ、前へ…とチャンピオンを押し返す!!! ガルサ10-9


12R 最終ラウンド… 挑戦者の石井、腕を上げて観客の声援に応える…


---絶対にチャンピオンになります!!!


ゴングがなると同時に、挑戦者は前進アグレッシブを展開、チャンピオンをコーナーへ追い込む!! その拳にどれほどの力が残されているかはわからない… が、このラウンドを明確に奪えば「判定勝ち」の可能性は充分に残されている… いや、このタイトルマッチの開催が地元名古屋であることを鑑みれば、客席の「念」や「声援」が採点に反映されないほうがおかしい、と考える方が妥当だ…


石井、残り3分間に全てを注ぎ込まんと、ひたすらに打って出る!!! 両者苦しい!!! 頭をつけての打ち合い!!!


っと、ここで運命の一発がついに生れ落ちる…


スパンッ!!!


チャンピオン・ガルサは挑戦者の左に合わせて鋭い左フックをカウンターで合わせた!!!



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完全にバランスを失った挑戦者、白いマットに背中から崩れ落ちた…


挑戦者の石井、しかし、すかさず立ち上がり、再開に応じるも、このビックチャンスに大きく息を吹き返したチャンピオンの連打猛攻に晒される…


あぁ、もう前に出られない… 今までは前に出られたからこそ、互角に戦い続けてこられたのだ…


踏ん張るだけではダメだ…


が、そのダメージは深い… 効いた… 残り2分間も、クリンチし続けられるはずもない…


石井の足が止まった… 


チャンピオンの左右連打を浴び、それでも倒れるものか…と両手を前に掲げてしがみつこうと亡霊のように前へ歩く… 


そして、力なく、しかし、それでも全身全霊を込めた、渾身の「スローパンチ」を打ち込む…



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ガルサの左フックがカウンターとなって再び命中!!! 膝が揺れる!!! が、まだだっ… まだ倒れない!!!


倒れてたまるかっ!!!


残り45秒!!! もう立っているのが精一杯だ… が、必死のクリンチで追い縋る… 


くらぁ…


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残り30秒!!! 


挑戦者が左アッパーをまともに喰い、さらに追撃の左フックを側頭部に浴びてバランスを失ったところで、レフェリーは両者を分けた…



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12R 2:30 TKOで勝者、ネストール・ガルサ 2度目の防衛達成!!!


石井選手、無念の、まさに、健闘虚しく…という壮絶なる敗戦でありましたねぇ…


また、当時のテレビ解説、試合直後に最終12Rまでの採点内容を伝えてくれてますねぇ…


---一人はガルサ、一人は石井、そして、もう一人はドロー…



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ってことは、この最終Rを生き延び、そして、もし、ポイントを奪えていたら夢の世界チャンピオンになっていた石井選手…


ですが、プロボクシングの世界にあって、そのような「たら・れば」ほど虚しく響くものもありませんねぇ…


その後、2000年にWBA世界スーパーバンタム級暫定王座決定戦をヨベル・オルテガと争うも11RTKO負け、さらに2003年、WBC世界スーパーバンタム級チャンピオンのオスカー・ラリオスと争うも2RTKO負けに散ってしまうわけですが、この「ガルサ戦」は1999年の年間最高試合に選定されたのですね…


しかし、石井選手の壮絶なる「前進」… 痺れましたねぇ…


そして、その驚異のアグレッシブの源である、『闘魂』でありますが、本当に神々しく、眩いものでありましたねぇ…


こういう言い方が相応しいかどうかはわかりませんが、最高の、負けっぷりでありました…


大感動…


これぞ、脳髄に刻まれるべき、名勝負であります!!

御愛読感謝


つづく