2008 10 24 ダイナミックグローブ 後楽園ホール
WBA世界フェザー級タイトルマッチ
チャンピオン クリス・ジョン 41W22KO1D
×
挑戦者 榎洋之 27W19KO2D
この注目の無敗対決の世界戦に挑むのは鋼鉄の左ジャブを持つ男、榎洋之…
迎え撃つチャンピオンはインドネシアの英雄、「超」テクニシャン、すでに連続防衛9度達成の名チャンピオン、クリス・ジョン…
…運命の一瞬が近づく
で、昨晩の世界戦、僕はメモを採点しか取れないほど応援に励んでしまったので、写真を幾つか掲載してゆきます…
<ボクシング>榎判定負け、王座獲得逃す WBAフェザー級 毎日新聞
…地上波オンエアーのない世界戦であったのは残念でした。
多くの方が新聞を目にしていると思いますが、結果は「明確な判定負け」でありました…
僕の採点は以下のようにメモが残っている…
ラウンド 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 計
ジョン 9 9 9 ・ 9 116
榎 9 9 9 9 9 9 ・ 9 113
公式の採点は「117-111」「118-110」「118-110」の3-0のユナニマスデシジョンであった…
しかし、会場となった後楽園ホールでありますが、9割9分が榎選手を応援する人々が溢れる状況であり、これ以上ない環境でのタイトル挑戦となりました…
さて、榎選手ですが、その最大の武器である左ジャブはもとより、右ストレート、左右フック、さらに強烈な左ボディーフック、せめぎ合いからのショートパンチ…とあらゆる攻撃を駆使し、それを打ち込むために前進、前進、前進…と過去最高のアグレッシブを発揮した…
そして、それはチャンピオン・ジョンに深いダメージを負わせて行った…
闘魂対決、ハート対決…この試合を顧みるならば、それは5分5分であったと僕の目には映った…
が、連続9度防衛の安定チャンピオン、ジョンの技巧とその滑らかさの前にポイントはことごとく奪われていったのだ…
完全に打ち抜かれた右ストレートに榎選手の顔面は大きく跳ね上げられ、その鋭いパンチに左瞼は僅か3Rで
塞がり始め、そして、榎選手が距離を潰した攻勢の先で待っていたのはジョンの右アッパーカットであった…
それは恐らく、「視覚の外」から突き上げられる鋭いパンチで、これがことごとく榎選手の喉元を抉り、さらに、顎を砕かんとするほどの角度で打ち抜かれ続けたのだ…
僕はその中盤、「ダメか…」と正直感じたのだ…
これだけ滑らかなコンビネーションで的確に打たれ続けてKOされないはずがない…と。
が、榎選手が発揮したど根性、その闘魂爆発の「圧倒的な熱量」であるが、それはジョンの眩いほどのコンビネーションによって蓄積しているはずのダメージを跳ね返し続けたのだ…
さらに、延々と研ぎ澄まし続けてきた左ジャブがジョンをのけ反らせ、その深く抉りこまれたボディショットにジョンがクリンチを余儀なくされ、その顔面を変形させていったのである…
6Rには有効打による右瞼をカットさせ、ポイントこそ奪われるも、しかし、KOの可能性を各ラウンド引っかき傷のように残し続けたのだ…
「奇蹟の予感と期待」…
に、ホールは震え上がった…
勝て、勝ってくれ、チャンピオンは確かに優れている、巧い、圧倒的だ…だけれど、「倒せない相手じゃない」…
そんな約2400名の応援者・支援者の想いがホールで一つになってゆくあの感覚はスペシャルである…
その熱い願いと声援、想いが榎選手の拳に宿る…
ジョンがのけ反る度に、榎選手の拳から発散されるのは我々の「想い」であり、これ以上の「恩返し」はない…
ボクシングがスポーツであり、「採点システム」が存在する以上、このタイトルマッチの結果は「完敗」の類に属する…
しかし、「観客の心」と「榎選手のアグレッシブ」が重なり合い、交じり合い、一つになってゆくという意味合いの「ドラマ性」「芸術性」「精神性」は過去に幾つか生観戦したタイトルマッチの中でも群を抜いていた…と言える感動が僕には残った…
技術の差…と呼ばれるものが残した傷跡は深い。
しかし、それ以上に、ボクサー・榎洋之の発揮した「闘魂」と「不屈」は過去に見たことがないほどのピークを維持したままフルラウンド36分間溢れ続けたわけですが、この感動の重さは特別な感触であった…
もちろん、僕には本人の気持ちは分からない…
でも、僕には『過去最高の榎洋之』が見えたし、そのガッツとアグレッシブに我々の声援が届き、それが響き渡った…という意味で、不満は全くない…
先ずはゆっくり身体を休めてください…
そして、じっくり考えていただきたい…
もう一度立ち上がると決意をされるならば、その「日本一固い拳」に、もう一度「声援」を乗せるために叫びたい…と感じました…
しかし、クリス・ジョン、憎らしくも素晴らしいチャンピオンであった…
榎選手のアグレッシブと爆発は「奇蹟的な充実」の領域に達していたように僕は感じたのだが、これを真っ向から受け止め、その眩いコンビネーションで弾き返したわけですが、その「奇跡的な充実」をねじ伏せる底力と巧さを生観戦できて本当に良かった…と心底感じました。
で、昨晩は試合後に呑みに出かけてこんな話題が挙がった…
先日、WBC世界フェザー級チャンピオンのオスカー・ラリオスに挑んでダウンを奪うも判定負けした粟生隆寛選手がジョンに挑み、逆に榎選手がラリオスに挑んでいたらどうなっていたのか…?
不毛だと思いながらも、そのどちらも是非見てみたい…と妄想が膨らみ始めたのは事実である…
もしかしたら、そのどちらもが世界チャンピオンの栄光を掴み取っていたのではないか…?
…酔いと悔しさに頭痛を抱えた状態であったが、いつまでも女々しくそんなことを考えてしまうのはマニアの性か…?
日本フェザー級6位
秋葉慶介 11W2KO5L3D
×
同級
小野澤洋次郎 7W4KO5L3D
は、三者三様のドロー…という結果であった。
僕は「勝負師」こと秋葉選手を応援していました…
しかし、本人にとってはまさに、痛恨の「ドロー」となってしまった今回の一戦…
「勝負師」としては、これは確かに「不本意」な結果であったと思います…
しかし、対戦相手であった小野澤選手、よく手が出ましたね、序盤こそ秋葉選手が距離を潰した戦いを出来たのですが、パワーで圧倒するも、しかし、小野澤選手のフットワークと距離感、その中間距離から打ち抜かれたワンツーの前にポイントを失ったような気がしますね…
結果はドロー…であっても、ランカーとしては「負けに近い感覚」が強いのは確かであると思います…
この結果を受けて、どのような「これから」を目指すのか…はすぐに結論は出ないと思いますが、しかし、もう一度タイトルマッチに…という気持ちが盛り上がるのであれば、僕はこれからも「勝負師」を応援したいと思います…
がんばれ!!!
さて、昨晩は試合観戦後に数人で居酒屋になだれ込み、おんおん…と呑み始めたところで携帯を紛失していることに気がつき、慌ててホールへTEL…
あった…
慌てて戻り無事回収… と、偶然、坂本博之さんがいらっしゃり、握手をして貰いました…
榎選手、最高のファイトでしたが本当に残念でした…とお話したところ、坂本さんはこう仰いました…
…負けてもいいんです、皆様の心に感動が残れば、負けてもいいんです。
ぐっ…
この言葉を聴いて蘇ったのは、「平成のKOキング」と呼ばれたあの頃の坂本さんの現役時代の姿であった…
その4度の世界戦はいずれも敗れてしまったわけですが、しかし、それでも限界まで現役であることにこだわり続けた「坂本博之」という一人のアスリートとしての戦いであった…
重度の腰痛を患いメスをいれ、数年に及ぶリハビリの果てについにリングに上がるも壮絶な敗北を喫する…
それでも、それでも、「現役」にこだわり続け、さらに戦い続けた坂本さん…
その坂本さんの口から零れた、この言葉の意味は重い…
僕がなぜ、ここまでボクシングが好きになったか…?
まさに、坂本さんが改めて教えてくれた、この「感動」という一語に打ち震えながら、再び、おんおん…と、お酒を飲んでしましました。
で、最後に、いつかの坂本博之さんの壮絶を極めた「引退試合」のリンクを貼っておきます…
坂 本~愛してる!! 生観戦!!! 過去記事 坂本博之引退試合
この試合も本当に涙が溢れました…
御愛読感謝
つづく