WBA世界フライ級「怪物」王者?坂田を妄想する… | ボクシング&ロック野郎 higege91の夜明けはまだか?

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WBA世界フライ級タイトルマッチ


王者 坂田健史 × 同級3位 久高寛之


これを妄想する前に、先ずは、僕の中の世界チャンピオン「坂田健史」像を確かめる作業から始めたい…



坂田統一果たす!!


忍耐と精神力、そして、尽きることの無い手数と前進が最大の武器と言われる坂田選手の懸命に戦う姿は、非常に感動的である。


なんと言っても世界初挑戦のベネズエラの超技巧派、ロレンソ・パーラ①は壮絶を超え、凄惨とも言えるタイトルマッチ…であった。


序盤にパーラのアッパーカットを喰い、なんとアゴの骨を骨折、歯を食いしばれない状態で、さらに溢れる血を飲み込みながら最終12Rまで戦い抜いたあのタイトルマッチ…


当然であるが、ボクシングとは『殴り合い』である…


それも、その階級で世界一強いと呼ばれる王者の拳をその状態で耐え抜き、さらに、殴り返し続けた…わけですが、これ、ちょっと想像しただけで背筋が凍る…というか、もう考えたくない…という状況ではなかろうか?


で、この初挑戦は判定負け、で、ついに迎えた再びのパーラ②…


これ、生観戦したのですが、王者の技巧の前に再びの判定負け、しかし、坂田選手は諦めませんでした。


減量苦を噂されたパーラが怪我を負い、設定された暫定王座決定戦はフランスの地で、対するは元ライトフライ級王者で階級を上げてきたパナマのロベルト・バスケス…


あぁ、この試合、坂田選手は不運に見舞われた… 足が揃ったところで軽いパンチを浴び、なんと尻餅をつく…


いや、これは勝負の世界… 仮に、足を踏まれていたとしても、レフェリーが「ダウン」の裁定を下したならば、それは絶対である…


見方によっては坂田選手の勝ちとする向きもあったが、しかし、これもスプリットの判定負け… 


もうダメか、さすがに坂田の心も折れるか…!?


いや、坂田選手は帰ってきた… 


怪我から復帰の正規王者のパーラを後楽園ホールに迎えた③であるが、このパーラ、なんと確信犯の計量オーバーで試合前に王座剥奪…


この「前王者」パーラの無道を粉砕して戦意喪失させての4度目の正直での戴冠…


しかし、この寡黙な男、その煮えたぎる執念を胸のうちに秘めた男に降りかかるは「前のチャンピオン、計量失格前王者」に勝っただけで、『真の世界王者』ではまだない…と言う残酷な評価であった。


で、以前負けた「暫定王者」であるロベルト・バスケスも当然存在している…


そして、ついに迎えた王者同士による統一戦…


この大一番で坂田選手は自らにとっての恐らくベストパフォーマンスを披露する。


暫定王者を延々と追い回し、延々と手数を発揮し、延々と前進し続けたわけですが、このタイトルマッチ、やや距離を残した状態から鋭い右ストレート、細かいパンチのまとめ打ち、メリハリの利いた素晴らしい戦いでありましたね…


暫定王者を判定で下しでの王座統一初防衛成功…


で、迎えたV2戦はタイのデンカオセーンであるが、序盤にいきなりダウンを奪われる厳しい立ち上がりも、尻上がりにペースを上げ挽回、かろうじて引き分け防衛、さらに日本人挑戦者を迎えた山口戦もまさかの序盤ダウンを奪われるもやはり後半挽回で判定で王座防衛…となったわけですが、坂田選手を知るボクシングマニア層に広がったのは…


坂田は極端なスロースターターであり、序盤は隙だらけ…という奇妙な印象である。


しかし、デンカオセーン然り、山口選手然り…であるが、見事なまでのカウンターパンチを喰ってダウンしたにも関らず、そこからエンジン全開となってゆく坂田選手の「異常なまでの驚異的スタミナ手数」が発揮されるわけであるが、この坂田選手の着火点から落ちることの無い『スタミナ』をボクシングマニアはこう評価する声が多い…


『怪物・坂田』…


で、WBA世界王者、坂田選手のこの『怪物』と呼ばれる『強さ』の正体を妄想する…


いわば、スタミナ手数が最大の武器と評されますが、これを解り易く理解しようとすると、そこに直結するものは何か…と言えば、やはり、超のつくほどの『努力と根性』…だと僕は感じるわけである。


巧さでは残念ながらあまり語られない…


いわゆるボクシングの醍醐味である「一発」もない…


こう言っては大変失礼であるが、「地味」なボクシングである。


しかし、僕に響いてくる坂田選手のボクシングの「感動の深さ」は、非常に『人間味』溢れる種類の、非常に『身近』な、『僕もあなたも頑張れば出来る』的な、これ以上ない素晴らしさに満ち溢れている…


あのトントンコツコツ…と繰り出される止まらないショートパンチに蓄積されたモノ…


人間にとって一番大切なもの…


もしかしたら、少しずつだったのかもしれないが、延々たる努力とその積み重ねによって塗り固められた『自分』…ではないか?…と妄想するわけであります。


全てのボクサーもそれを実現するために努力するわけですが、僕の印象であるが、坂田選手のそれは、一度「固くなった」あるいは「凝固」したその積み重ねた『自分』であるが、それは決して『緩むことが無い』…と言うか、その上乗せは増えることはあっても、絶対に『目減りしない』ほど特殊な何か…なのではないか?


…と妄想するわけであります。


成功と失敗を繰り返すのが人間の性であります…が、4度目でついに念願の世界タイトルを手に入れた坂田選手であるが、「真面目」で、「実直」で、常に「懸命」であり、度重なった「挑戦失敗」と「アゴを粉砕されるほどの絶望」を完全に自らの『血と肉』に完全に消化できたから…なのではないか?


人は失敗を繰り返し、また、にもかかわらず、同じ失敗を繰り返すわけでありますが、これは「己への甘さ」、「余力を残した失敗」、「欠落した懸命」が原因であるならば、それを『完全克服』しようとし、また、リングの上でそれを『実践』し続ける『人間・坂田健史』の強さの向こうに見えるもの…


ボクシング云々…以上に、その『誠実な強さ』に、僕は坂田健史の『怪物』をさらに発見するわけであります。


そして、その常に『切実な懸命』と同居する世界王者・坂田健史に、『人間としての美しさ』を感じる…わけであります。


その「精神力」は人間の限界に挑んでいる…と感じる。


無尽蔵の手数とスタミナを支える坂田健史の真の「強さ」…


やはり、その根幹にあるものは、なんと言っても『人間力』である。


この人間力の王者に挑むは世界3位の久高選手であるが、『心』で負けたら勝機は無い。


しかし、比べるまでもなく、坂田選手が築き上げた『人間力』であるが、これには歯が立たないであろう久高選手…


苦労人王者・坂田選手同様、敗北を糧にのし上がってきた久高選手の苦しみの3連敗を僕は知っている…が、この壁は想像以上に重いはずである。


王者有利が戦前評の大多数であろう…


では、久高選手の勝機はどこに…?


今度はこれを考えてみたい。


御愛読感謝


つづく